
「100年に1度」といわれる大規模再開発が進む東京・渋谷から、百貨店が姿を消す日が近づいている。東急百貨店の東横店、本店に続き、今年9月末には西武渋谷店が58年の歴史に幕を下ろす。若者文化の発信地としての役割を担ってきたが、消費スタイルの変化に対応しきれなかった。
西武渋谷店は1968年、渋谷駅前のスクランブル交差点近くで故堤清二氏が率いた旧セゾングループの旗艦店として開業。無名の若手デザイナーの商品をバイヤーの感性で組み合わせて提案する手法でコムデギャルソンやイッセイミヤケ、ヨウジヤマモトなどのブランドが世界的に流行するきっかけを作り、「DCブランド」ブームの聖地として1970~80年代に一時代を築いた。
しかし、2000年代以降、インターネット通販の普及や若者のファッション意識の多様化により、百貨店が提供する「特別感」や「発見」の価値が薄れてきた。特に渋谷では、ストリートカルチャーやラグジュアリーブランドが混在する中で、西武渋谷店の旗艦店としての存在感は次第に低下した。
閉店の背景には、周辺の再開発競争も影響している。渋谷スクランブルスクエアや渋谷パルコなどの新商業施設が次々と開業し、百貨店型の業態では集客競争に勝てなくなった。さらに、新型コロナウイルス感染拡大による消費行動の変化が、経営判断を早めたとみられる。
跡地については、西武ホールディングスが「具体的な計画は未定」としているが、周辺地域ではオフィスやホテル、文化施設と複合した再開発構想が浮上している。58年にわたって若者文化の象徴であり続けた百貨店の閉鎖は、日本の小売業の転換点を示す出来事と言える。