
新生活が始まり、多くの企業が業務効率化の切り札として生成AIの導入を急いでいる。ITmedia NEWSの連載漫画「1週間後に生成AIで恥をかく新入社員」では、自称スーパー新人のニイジマが、AI活用の「地雷」を次々と踏む姿が描かれている。資料作成の研修でAI生成物をフル活用し、見栄えの良い資料を完成させたニイジマだったが、そこにはビジネス上の大きな落とし穴が待ち受けていた。
生成AIの利用において最も注意すべき点の一つが、既存の著作権に対する侵害の可能性である。文化庁は「AIと著作権に関する考え方について」という資料をまとめ、法的リスクを明確に示している。同資料では「生成・利用段階において、既存の著作物との類似性及び依拠性が認められれば、当該既存の著作物の著作権者は、生成物の生成行為や利用行為が、既存の著作物の著作権侵害に当たるとして、当該行為の差止請求や損害賠償請求を請求し得る」との見解を示している。
この資料は文部科学省内の組織が論点を整理したものであり、直ちに法的拘束力を持つものではない。しかし、司法判断には時間がかかるため、実務上のガイドラインとして極めて強い影響力を持っている。個別の事案は最終的に裁判所の判断に委ねられるが、ビジネスの現場でAIを扱う者は一度は目を通しておくべき重要文書と言えるだろう。
著作権以外にも、生成AIがもっともらしい嘘をつく「ハルシネーション」という深刻な課題が存在する。例えば2024年末、米GoogleのAIが50メートル走の世界記録を問われ、誤って「ウサイン・ボルトの9.58秒が最速」と回答した事例が報告された。国際連盟の記録によれば当時の室内最速はドノバン・ベイリー氏の5.56秒であり、AIの回答は文脈を無視した明らかな誤りであった。
AIによる効率化は重要だが、出力された情報を鵜呑みにすれば、成果物のクオリティーを著しく損なう結果になりかねない。AIが生成したテキストやデータを資料に引用する際は、必ず情報の裏取りを行う「ファクトチェック」が不可欠である。新社会人のみならず、すべてのビジネスパーソンにとって、AIは魔法の杖ではなく慎重な扱いが求められる道具であることを肝に銘じるべきだ。