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エージェント型AIの台頭により、「SaaSの終焉」論が再燃しているが、Gartnerは単なる終焉ではないと独自の見解を示す。エージェント型AIは企業向けソフトウェアの収益モデルをどのように破壊するのか。また、UIで製品を選ぶ時代は本当に終わるのか。
Gartner Japanは2026年7月8日、エージェント型AIが企業で使われるソフトウェアの収益モデルに大きなディスラプション(破壊)をもたらすとの見解を発表した。
AIがSaaSに取って代わる「SaaSの終焉」を巡る議論が活発に。Gartnerは今回の動きを「Saaspocalypse」の再定義と位置付けた。同社のGeorge Brocklehurst氏(マネージング バイス プレジデント)は、「エージェント型AIはソフトウェアの経済そのものを変える」と述べる。
ただし、Gartnerが描くのは単純な終焉ではない。エージェント型AIは企業が使うソフトウェアの収益モデルを具体的にどのように破壊するのか。また、それによってIT部門が実施してきた「使いやすいUIを持つ製品を選ぶ」という選定行動はどのように変化するのか。
まず、Gartnerによると、エージェント型AIによって2030年までに最大2340億ドルのエンタープライズ・アプリケーション向け支出が失われる可能性がある。この金額は2030年時点で同市場におけるSaaS支出の約20%に相当するという。
この変化のカギを握るのは、Gartnerが「エージェント型アービトラージ(裁定取引)」と呼ぶ現象だ。エージェント型AIが複数のシステムをまたいでタスクを代わりに行うことで、ユーザーは従来型のソフトウェア・インターフェースとやり取りしなくて済むようになる。Brocklehurst氏は「エージェント型システムは成果を直接提供する。従来のアプリケーションのUXを迂回することで、ソフトウェアを『見えなく』させる」と語る。これにより、ユーザー数の増加と収益の増加の結び付きが断たれるというのが同氏の見立てだ。
Gartnerによると、既存のソフトウェア・ベンダーが競争力を保つには、提供価値の重心をユーザー・インターフェースから成果に推移させる必要がある。「エージェント型AIシステムがさらに活用されるようになれば、UIは差別化要素ではなくなる」(Brocklehurst氏)。実行面でエージェント型の能力を自社製品に組み込むことや、顧客企業固有の知識を獲得することが求められるという。「レガシー・ダッシュボードやシート数課金モデルを維持するベンダーは、存在意義そのものが問われるようになる」(Brocklehurst氏)。
今後は、企業システム全体を横断するエージェント型のレイヤーとして、「機能」ではなく測定可能な「成果」を提供する役割が求められる。Brocklehurst氏は、こうした役割を果たす提供ができる新興ベンダーが既存の予算だけでなく、ROIの向上によって生まれる追加予算も獲得することになるとの見通しを示す。
ユーザー企業の期待も変わりつつある。Brocklehurst氏は、企業の購買担当者の関心が新しいツールやダッシュボードの導入から、「成果そのもの」へ移っていると分析する。「AIからより良い成果を得るには、長期にわたって組織の記憶や顧客のコンテキストを保持できるシステムが必要だ」(Brocklehurst氏)。
国内のユーザー企業に向けて、Gartnerの本好陽次氏(バイス プレジデント アナリスト)は次のように補足する。「ERPをはじめとするミッション・クリティカルなシステムについては、AIかSaaSかという二者択一的な話ではない。ERP機能の一部はAIに置き換わり、自律的に実行されるようになるだろう。しかし、高い信頼性やコンプライアンスへの対応が求められるシステム全体を、完全にAIに任せることは現実的ではない」