
音楽ライブなどを目的に旅行を楽しむ「ライブツーリズム」が活況だ。大阪のホテルでは、ゴールデンウイーク(GW)明けの閑散期でもライブ参加者らの宿泊予約が増え、特需をにらんだサービスも続々と登場している。経済的な効果は広がっているが、ライブなどの会場となるホールの閉館や休館、公演を支える人材不足がネックとなり、市場の成長を阻む懸念が出ている。
「閑散期を埋めるありがたい存在」。GW後の5月中旬に、京セラドーム大阪(大阪市西区)で開かれる人気アイドルグループ「嵐」のライブを歓迎するのは、「ホテルリブマックス大阪ドーム前」(同)でフロント係を務める男性だ。
ホテルからライブ会場までは徒歩約5分と近いため、最安で1泊1人約4千円の宿泊プランが最大で同約5万9千円まで高騰。GWピーク時の約4万7千円を上回る価格だが、男性は「それでも予約は入る」と話す。
大阪の他のエリアでも、ライブツーリズムの特需を狙う動きがある。「OMO7大阪 by 星野リゾート」(同市浪速区)は、ライブ前後のニーズに応えるサービスを通年化。客室で会場に向かう前のドレスアップができるよう早めのチェックインを導入し、深夜でも大人数で盛り上がれる飲食店をリストアップし鑑賞後の高揚感を共有する場を提案する。
国内のライブ市場は堅調だ。ぴあ総研「ライブ・エンタテインメント市場動向調査」によると、国内開催の音楽コンサートとステージの2024年のチケット販売額は前年比10・9%増の約7605億円と過去最高を記録。特に音楽コンサートの伸びが顕著で、30年にはステージも含め8700億円と推計する。
市場の高成長は、好きなアイドルらを熱烈に応援する「推し活」層が支える。ライブのついでに「推し」の出演作品のロケ地へ足を延ばしたり、応援対象と似た名前の神社でチケット争奪戦の必勝祈願をしたりする「聖地巡礼」も人気で、「金に糸目をつけない」という人は珍しくない。
コンサートプロモーターズ協会(ACPC)によると、アリーナ開催のコンサート来場者消費による25年の経済波及効果は1興行平均で3・6億円に上った。特に地方では開催地以外からの来訪で宿泊を伴うケースが多く、経済効果が高まる傾向にある。
こうした中、老朽化を理由に全国で相次ぐホールの閉館や休館が、市場の持ち上がりに水を差している。ACPC正会員が対象の調査では25年のライブ・エンターテインメント市場が売上高、動員数ともに過去最高となる一方、公演数は前年比1・4%減の3万3769本と2年連続で前年を下回った。閉館・休館による会場不足などが要因だという。
旅行ジャーナリストの村上英子氏は「人工知能(AI)で代替する仕事は増えるだろうが、ライブは依然として人の技能と現場力が支えている」と述べ、舞台設営や照明、音響など専門職人材の不足が深刻化していると指摘する。
国内アーティストにとどまらず海外からの公演誘致や、日本の音楽コンテンツを輸出産業として伸ばす上でも受け皿の弱体化を防ぐ必要がある。(田村慶子)