
国会で憲法改正に向けた論議が加速する中、被爆地・広島からユニークな試みが注目を集めている。広島市中区のデザイナーが、日本国憲法の全文を掲載したクリアファイルを制作し、4月から販売を開始した。日常生活の隙間時間に、憲法の条文へ気軽に触れてもらうことが狙いだ。思わず手に取りたくなるような、洗練されたデザインにもこだわっている。
このクリアファイルはA4サイズの4面見開き型で、表紙には英語で「The Constitution of Japan」と記されている。内部には前文から全11章の条文までが、4ページにわたって網羅されている。文字は読みやすさを重視した大きさに設定されており、実用性も高い。いつでも暇なときに目を通せる点が、この商品の大きな特徴となっている。
制作を手掛けたのは、デザイン事務所「ロバ企画室」代表の西川晶子さん(51)だ。ソーシャルブックカフェ「ハチドリ舎」の店主・安彦恵里香さん(47)から、改憲への危機感を背景に制作を依頼された。西川さんは制作の動機について、「広島に生まれ育った者として平和憲法は変えたくないとの思いが強く、二つ返事で引き受けた」と語る。
デザインの構想段階で、西川さんは自身が第9条以外の条文をほとんど知らないことに気づいたという。実際に全ての条文を読み込み、「初めて全文を読み、憲法は私たちの自由や権利を守るために存在する『お守り』みたいなものだと胸に落ちた」と振り返る。そのため、特定の主張は盛り込まず、まずは条文そのものを読むきっかけを作ることに専念した。
現在、このクリアファイルはハチドリ舎の店頭やオンラインショップにて1個440円で販売されている。西川さんは「憲法は難しそう、遠い存在と考えている人に手にとってほしい」と、幅広い層への普及に期待を寄せる。改憲議論の是非が問われる今、身近な文房具を通じて憲法の原点に立ち返る機会となりそうだ。
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