
トランプ前大統領の支持層である「MAGA(米国を再び偉大に)」を標的に、生成AIを悪用した巧妙な詐欺の実態が明らかになった。米誌WIREDが報じたところによると、SNSで人気を博した金髪女性インフルエンサー「エミリー・ハート」の正体は、インドに住む医学生の男性だった。この医学生は、実在しない美女の画像を生成して保守派の男性たちを惹きつけ、多額の利益を得ていた。
取材に応じた医学生は「サム」と名乗り、AI技術を駆使して架空の人物を作り上げたと説明している。彼は米女優シドニー・スウィーニーさんの画像をChatGPTに読み込ませ、ニューヨーク市で働く20歳の看護師という緻密な設定を付与した。キリスト教やビール、氷上釣りを愛するというプロフィールは保守層の好みを反映しており、サムは「私が投稿した全てのリール(短時間の縦型動画)が300万回再生、500万回再生を記録した」と語る。
Instagramのアカウントが停止された後も、サムは有料SNS「Fanvue」に戦場を移して収益化を続けた。彼はビキニ姿のAI画像をフォロワーの男性たちに売り、数千ドルに及ぶ稼ぎを手にしたという。サムはこの手法について「オンラインでこんなに簡単に稼げる方法を他に知らない」と豪語している。さらに、購入者たちのことを「MAGA支持者は超バカな連中で、引っかかる」と冷酷に評した。
サムは当初、リベラル派をターゲットにした「エミリー」の別バージョンも試作したが、結果は芳しくなかったようだ。米紙ニューヨークポストの引用によれば、彼は「民主党員はAIの粗悪品だと分かるので、あまり反応してくれない」と当時の苦労を明かしている。保守派には若くて魅力的な女性のインフルエンサーが少ないという隙を突き、孤独な男性たちの心理を巧みに操った形だ。
この詐欺行為の背景には、医学生としての将来設計という皮肉な動機が隠されていた。サムは大学卒業後に米国へ移住するための費用を蓄えるため、この「AIビジネス」に手を染めたとされている。AI技術の進化が個人のなりすましや政治的ターゲットへの詐欺を容易にしている現状は、現代社会が抱える深刻な課題を浮き彫りにした。ネット上の情報の真偽を見極める力が、これまで以上に問われている。
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