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WEKFESTの会場では、訪れる者の視線は自然と低い位置に向かう。磨き込まれたボディ、限界まで落とされた車高、精緻なツラ合わせ。スタンス、USDM、スポーツコンパクト。このイベントには、そうしたカルチャー固有の美学が濃密に漂っている。
そんな空間の中で、一際異彩を放つ一台があった。4×4エンジニアリングサービスのトヨタ『ランドクルーザー250』だ。
高さは2メートルに迫る。巨大なタイヤとワイドなシルエット。話を聞くと、ほぼノーマルのランクル250を、バネとショックだけで60ミリリフトアップ。20インチホイール(ブラッドレー・フォージド匠)と42インチタイヤの組み合わせで迫力満点だ。明らかにジャンルが異なるが、多くの来場者が足を止め、カメラを向け、車両の周囲には絶えず人がいた。
「普通の展示をしても、こういうイベントでは埋もれちゃいますからね」と笑いながら語ったのは、4×4エンジニアリングサービスの木村義和さんだ。
WEKFESTへの出展は今年で3年目。かつては「四駆だけ浮いている」感覚もあったという。だが今、会場の空気は変わり始めている。木村さんの話は、単なる四駆人気ではなかった。
むしろ印象的だったのは、「クルマ好きのその先」と呼びたい感覚だ。「うちのスタッフもみんなそうですけど、元々ドリフトとかスポーツカー好きな人間ばっかりなんですよ」
「でも、年齢を重ねて、家族ができたりすると、四駆に乗ってキャンプに行ったりするようになる」その言葉を聞いた瞬間、このランクル250が異物には見えなくなった。
低いクルマに熱中する若者たちも、いつか人生のフェーズが変わる日が来るかもしれない。仲間と走り回った夜の延長線上に、家族との旅やアウトドアという趣味が現れることもある。そしてその時も、彼らは「クルマを好きでいたい」と思うのだ。
WEKFESTの会場で4×4エンジニアリングサービスが示したのは、単なるリフトアップスタイルではない。クルマ好きであり続けるための未来の形だった。
だが、彼らの世界は単なるアウトドアブームとも少し違っていた。そう感じたのは、WEKFESTの翌週に行われた別イベント、FIELD STYLE TOKYOでの出展を見た後だった。
その会場で話を聞いた楠神卓社長の言葉から感じたのは、「流行」ではなく、より長い時間軸で育まれたブランド哲学だ。
「クルマが変わるだけで、行ける場所が変わるんですよ」と楠神社長は、リフトアップや大口径タイヤの意味を、単なる見た目ではなく「体験を広げるためのもの」として説明した。
森の奥の道、普通車では躊躇する道、これまでなら引き返していた場所へ行けるようになる。それは機能性の向上だけではない。クルマが変わることで、人の行動や景色、人生の楽しみ方そのものが変わっていく感覚だった。
一方で、4×4エンジニアリングサービスのものづくりには、確かな「競技の血統」も流れている。「ブラッドレー」と名付けられたオリジナルホイールやサスペンションは、もともと海外・国内のクロスカントリーラリーに投入され、確かな実績を積み重ねてきた。オフロード競技の世界で「壊れないこと」「走り切ること」を求められて進化してきたものだ。
「元々の目的はドレスアップじゃないんですよ。全て競技で生き残るために生まれてきたものなんです。だから本物でないと生き残れない」楠神社長の言葉が真に迫る。
確かに会場で見たブラッドレーは、声高に主張するホイールではなかった。しかし、独特なブロンズや無骨な5本スポークには、長年オフロードを走り続けてきたブランドだけが持つ説得力が宿っていた。
さらに面白いのは、彼らが「伝統」だけを守ろうとしているわけではないことだ。「変わり続けるけど、芯の部分は変わらない」ブランド創業から50年以上、その精神を育み続ける社長の言葉にも重みがある。
流行を追いかけるのではなく、次の世代にも残っていくものを作る。その思想があるからこそ、4×4エンジニアリングサービスのクルマやパーツには、「本物」としての、さらに「カルチャー」としての匂いが宿るのだろう。
FIELD STYLEの会場で、もう一つ強く印象に残った存在があった。4×4エンジニアリングサービスとの絆が深い、サンワークスによるランドローバー『ディフェンダー』だ。
ヴィンテージ感を漂わせるマットカラーのボディ。無骨ながら洗練され、「ザ・オーバーランドスタイル」というアウトドアカスタムでありながら、都会的な空気も漂わせている。
この車両を手掛けたサンワークス代表の出路渉さんは、「移動手段ではなく、仲間みたいな存在」としてクルマを捉えているという。
「行きたい場所に連れて行ってくれる、一緒に旅する仲間なんですよね」その言葉が自然に腑に落ちた。彼らが作っていたのは、「見せるためのカスタムカー」ではなく、人生を一緒に走るためのクルマだと感じられたからだ。
しかも、この世界が一つのブランドだけで完結していないことが深みを加える。4×4エンジニアリングサービスの「ブラッドレー・フォージド匠」、TOYO TIRESの「OPEN COUNTRY R/T TRAIL」、IPFのライト、サンワークスの架装。それぞれ異なるブランドでありながら、根底に流れる価値観はどこか近い。
「ちゃんと使えること」「本物であること」そして「旅に出たくなること」。その思想が重なり合い、一つのカルチャーが形作られているように見えた。中でも、楠神社長が「最高峰モデル」と語る「ブラッドレー・フォージド匠」は象徴的だ。ディフェンダーにも装着されたそのホイール。
ブラッドレーシリーズの頂点として開発された鍛造ホイールは、名前に込められた通り「クラフトマンシップ」そのものだという。ひと目で匠と分かるブロンズカラーも、派手さを狙ったものではない。しかし不思議と目が吸い寄せられる。競技の世界で鍛えられた無骨さと、日本的な美意識が同居する造形がすべてを物語っていた。
そして今、そのホイールはアメリカやオーストラリア、中東など、世界中のオフロードシーンへと広がり始めている。
「海外へ行った時に、自分たちが作ったホイールを履いてくれているのを見るとめちゃくちゃ嬉しいですよ」と楠神社長。その表情からは、「売れた」こと以上に、「文化として受け入れられている」ことへの純粋な喜びが伝わってきた。
WEKFESTとFIELD STYLE。一見するとまったく違うイベントだが、両方に足を運んで見えてきたのは、「クルマを好きでいたい」という気持ちは、年齢やジャンルを超えてつながっていくということだった。
4×4エンジニアリングサービスがつくっているのは、ホイールやサスペンションだけではない。人生のフェーズが変わっても、クルマを好きでい続けられる場所そのものなのかもしれない。