
トランプ政権が、米国の基礎研究を支える中枢機関である全米科学財団(NSF)の理事会メンバー全員を解任したことが明らかになった。米メディアが27日までに報じたところによれば、第2次トランプ政権による科学分野への強権的な介入姿勢が鮮明となっている。独立性を重んじてきた学術界からは、政権による統制強化への懸念と反発が急速に広がっている。
1950年に設立されたNSFは、米国内の基礎研究における公的資金提供を担う極めて重要な機関である。その中核を成す理事会は、政権や議会に対して科学政策の助言を行い、多額の予算支出を監督する役割を果たしてきた。理事は大統領が任命し、通常は6年の任期中に段階的に交代することで独立性を担保してきたが、今回の全員解任はその慣例を根底から覆す異例の事態だ。
ニューヨーク・タイムズ紙などの報道によると、解任対象となった理事らは24日、ホワイトハウス人事局から即日解任を告げるメールを受け取った。解任の具体的な理由は示されておらず、民主党のゾーイ・ロフグレン下院議員も全員の解任を確認したとの声明を発表している。朝日新聞の取材に対し、ホワイトハウス側は「NSFの活動は引き続き中断なく進められる」と回答するにとどまり、詳細な説明を避けている。
第2次トランプ政権はこれまでもNSFの予算縮小を提案するなど、科学分野への介入を強める動きを見せていた。今回の理事全員解任という強硬策は、政権の意向を直接反映させるための「目先の強権」指向の表れであると批判されている。中長期的な国力維持に不可欠な科学研究の独立性が損なわれることで、米国が「科学大国」としての地位を失いかねないとの危機感が専門家の間で強まっている。
米国の制度上、憲法第2条に基づき「行政権は大統領に属する」とされており、その権限は日本の議院内閣制などと比較しても極めて強力である。この大統領特有の強大な権力が、科学や文化芸術といった本来政治から距離を置くべき分野への直接介入を可能にしている。民主主義の根幹を揺るがしかねないこの事態は、今後の米国の科学技術政策のみならず、国際社会全体に深刻な影響を及ぼす可能性がある。
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