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自動車業界は電動化やカーボンニュートラル、新技術の進化、消費者ニーズの変化など、さまざまな課題に直面している。変化が激しい環境の中で、求められる戦略は何か。未来を切り開くには、どうすればいいのか。本連載では、自動車業界の未来を多角的に分析・解説していく。
トヨタのアルファード/ヴェルファイア、そしてノア/ヴォクシーは、日本のミニバン市場で圧倒的な強さを誇る2大ブランドであることは間違いない。
しかしミニバン界には、そんな2強とは別次元の領域で高い人気を維持している車種もある。それは、三菱のデリカD:5だ。なんとデビューから19年が経過したにもかかわらず、高い人気を維持するばかりか、過去最高の販売台数を記録しているのだ。
ブランド通称名別販売台数で、2025年度は2万6379台を販売し、デビュー直後の2007年度を上回って過去最高を更新した。これは新車販売としては異例のことだ。
なぜデリカD:5の販売台数は、今になって伸びているのか。それは、走破性や独自の本格4WDミニバンというポジションが支持され続けていることや、長年の改良による熟成度の高さが評価されていることが大きい。
そもそもデリカは、トヨタのハイエースのライバルといえるキャブオーバー型(エンジンの上にキャビンを配置する)のワンボックス型小型貨物車が基本モデルだった。
デビュー翌年の1969年には乗用車タイプの9人乗りワゴン、デリカコーチも発売されたが、個人用というより乗員輸送用のマイクロバスのような位置付けであった。
1979年に2代目へフルモデルチェンジして、丸みのあるデザインから直線基調のボクシーなデザインへとスタイリングを一変。鋼板プレス技術の発展もあって直線的なデザインが可能となり、新鮮な印象を与えることから、このデザインが主流となったのだ。
乗用車モデルはデリカスターワゴンという名称で、自家用車として本格的なワンボックスワゴンへと仕立て上げられた。そして三菱は、本格的な4WD(四輪駆動)車のパジェロと共にタフな4WD車をそろえるようになり、デリカスターワゴンにも4WDを設定した。
そもそも三菱は、戦時中にジープ型の4WD車の開発を国から命じられ、戦後は米ウイリス社からライセンスを得てジープを生産販売してきた実績があった。トヨタのランドクルーザーも発端は同じだが、独自モデルとして発展してきたのに対し、三菱はジープの生産を続けたという点で立ち位置は異なるが、1980年代に入ると独自の4WD技術開発へと進路を変えるのだ。
そうして1982年に登場したのがデリカスターワゴン4WDだった。これはピックアップトラック「フォルテ」のパートタイム式4WDシステムを、シャーシごと移植したものだった。
「セミモノコックボディ構造」といえば聞こえはいいが、要は別のクルマのシャーシにボディを載せたような作りで、走破性を高める大径タイヤと、高い最低地上高を確保するための車高によって、通常のモデルとはまるで異なるシルエットに仕立て上げられた。
しかし、それがタフで無骨なイメージを強調したことから、人気が集まった。パリ・ダカールラリーへの挑戦を続けるパジェロと同様に、誰もが買い求めるクルマではなかったが、憧れの1台へと成長したのだ。
2代目のデリカスターワゴンは、よりシャープなデザインで前衛的な印象になり、室内も高級感が高まった。
この頃から国内では、本格的な4WDブームが起こり、トヨタのランドクルーザーや三菱のパジェロ、日産のサファリ、いすゞのビッグホーンなど、各社が本格4WD(不整地を走ることを目的とした4WD車)を開発し、人気を競うようになる。
だが、デリカスターワゴン4WDは走破性は高いものの、エンジンが奥にあるレイアウトであったためスペースに制約があり、エンジン性能を高めにくかった。
そこで次の世代では、構造を大きく変更。エンジンを前方に配置したセミボンネット型のミニバンへと変化するのだ。
それが1994年に登場した、4代目となるデリカスペースギアであった。ボンネットを追加したことでボディは大幅に延長。ホイールベースも拡大したため、標準ボディでも全長は50センチ近く長くなり、ロングボディは全長5メートルを超えた。
堂々としたボディが風格を感じさせ、デリカスペースギアも高い人気を維持した。しかし、4WDブームにも終わりが訪れる。その後、SUV人気へとつながっていくのだが、明らかに流れが変わった。
ディーゼル規制が厳しくなったことが、本格4WDの存続を危うくさせたのだ。排ガス問題などでディーゼル車に対するイメージの低下もあり、4WDブームは収束。ミニバン、そしてSUVへとムーブメントが変化していく。
デリカスペースギアには3リットルのV6ガソリンエンジンも設定されていたが、人気をけん引していたのは、低速トルクの強いターボディーゼルだったのだ。そのため三菱は、第5世代のデリカでは戦略を変える必要に迫られたのだろう。
第5世代のデリカD:5となっても、本格4WDとしてのアイデンティティーを守り抜こうとしていたが、ディーゼルの排ガス規制をクリアすることは難しく、D:5はガソリンエンジン車のみでデビューすることになった。
エンジンは、排気量2.4リットルで横置きにすることで、ボディをコンパクトにした。しかも、シャープなデザインで精悍(せいかん)さを高め、むしろカタマリ感のあるシルエットが好評を博した。