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岩手県北上市に住む後藤誠子さん(56)の次男、匡人さん(30)に変化が起きたのは、高校1年生の夏休みだった。一生懸命に勉強して受かった地元の進学校で、誠子さんは長男と同じ学校を卒業させた経験から、次男にも大学進学を願っていた。しかしある朝、匡人さんは「具合が悪いから起きられない」と言って布団から出てこなくなった。本人にも理由はわからないようだった。
シングルマザーだった誠子さんは、なんとか学校に行かせようと毎朝怒りに怒った。2階から自分より体の大きい匡人さんを引きずり下ろして、車に乗せた。今思えば、鬼のようだったと振り返る。怒るのをやめると学校へ行く日もあり、その後も登校したりしなかったりを繰り返しながら、ぎりぎりで出席日数を満たして進級し、卒業した。
卒業後、匡人さんは「ギターを作る職人になる」と言って上京し、専門学校に入学した。進路が心配だった誠子さんは、息子がやりたいことを見つけたと喜んだ。だが翌年、匡人さんから「学校に行っていない」と連絡があった。誠子さんは「振り返れば、高校の時も、『なぜ行かないのか』と本心を聞いていなかった」と後悔する。
誠子さんは長年にわたり「子どものために」と思って頑張ってきたが、手放すことは築き上げてきたものが崩れていくようで怖かった。しかし次男と向き合う中で、無理に登校させるのではなく、息子のペースを尊重する「優しく諦める」境地に至った。今は息子が自分の人生を歩むのを見守っている。
この経験は、子育てにひと区切りつきつつある多くの親に共感を呼んでいる。誠子さんは「子どものため」という呪縛から解放され、親子の新たな関係を模索している。不登校やひきこもりに悩む家族にとって、一つの希望となるメッセージだ。