
上野賢一郎厚生労働相は9日の参院厚生労働委員会で、日本維新の会の猪瀬直樹参院幹事長から生活保護受給者の医療費全額公費負担を見直し、自己負担を求める制度改正を求められ、慎重な姿勢を示した。「必要な受診まで抑制されるおそれがある」などと述べた。
猪瀬氏は「生活保護受給者は医療扶助を受けるため医療費の自己負担が一切ない。そのため、患者と医療機関の双方にモラルハザードが生じ、頻回受診や多剤重複投薬が生じているといわれている」と切り出した。
政府は頻回受診や多剤重複投薬対策の実施状況を調査するなど取り組みを行っているが、猪瀬氏は「医療扶助費はここ3年間1.7兆円で横ばいだ。あまり効果が出ていない。生活保護受給者の行動変容を促すような施策ではないからだ」と指摘した。医療扶助費の1.7兆円は、生活保護費の半分ほどを占める。
猪瀬氏は「誰も反対しないようなところしかやらないから、何も生み出さない。反対を押しのけて抵抗勢力と戦うというふうに、モラルハザードを引き起こす仕組みを抜本的に改めない限り、この巨額の生活保護費の削減はできない」と述べ、生活保護受給者を国民健康保険や後期高齢者医療制度に加入させるべきだと主張した。
上野氏は「生活保護受給者は保険料の負担能力がなく、多くが医療扶助を受けている。国保や後期高齢者医療制度に加入した場合には、他の被保険者の保険料負担や保険財政に与える影響が大きい」と課題を挙げ、「保険者である地方団体の意見を聞いたうえで慎重に検討する必要がある」と否定的な見解を示した。
これに対し猪瀬氏は「やり方はいろいろある。段階的にやればよい」と述べた。また、「自己負担についても段階的に進めれば、できることはできる。まずは定額負担で、例えば『ワンコイン』にするとか、その後定率1割負担にしたらどうかとか考える」と提案した。
上野氏は「1回あたりの金額が少額であったとしても、自己負担が用意できずに必要な受診まで抑制されるおそれがある。そのようなことを考慮すれば、慎重な検討が必要だと考えている」と述べた。
これに対し猪瀬氏は「生活保護受給者が国保や後期高齢者医療制度に加入することによってモラルハザードがなくなり、数千億円ぐらいの医療費が削減できると考えられる」と指摘。医療費の自己負担相当額を支給して国保などに加入させる考えに加え、低所得者に給付を行う「給付付き税額控除」に言及した。猪瀬氏は「給付付き税額控除は『負の所得税』といって、お金のある人から税金を取り、貧しい低所得の人に対しては逆に給付をするものだ。生活保護の人も全部シャッフルして給付をするという改革を、生活保護制度そのものも全部ひっくるめてやらないといけないのではないか」と主張した。「医療保険制度に自立した形で入ってもらい、きちんと給付はする。就労意欲、勤労機会を得るようにしながら、そうではない人にはきちんと給付をして、医療保険に入ってもらうという形が、これからの在り方ではないか」と述べ、上野氏に対し「任期中に手をつけてもらいたい」と促した。