
中東の戦争が続くイラン情勢は、日本の生存を確保する上で現憲法が足かせとなっていることを浮き彫りにした。国民と日本を守るため、憲法改正は急務である。
通産官僚だった堺屋太一氏は昭和50年、小説「油断!」でホルムズ海峡封鎖の影響に警鐘を鳴らした。登場人物に「石油輸入が平常の三割になれば、二百日間で三百万人の生命と財産の七割が失われるでしょう」と語らせている。
現在、イランがホルムズ海峡の通航を阻んでいる。日本は原油輸入の9割を中東に依存し、その大部分が同海峡を通る。別ルートの調達や国家備蓄の放出でしのぐが、このままなら年明けには深刻なエネルギー危機が迫る。
ホルムズ海峡封鎖は米国・イスラエルとイランの懸案だが、日本自身の生存がかかる問題だ。あらゆる手を尽くし、海峡の通航回復を図らねばならない。
米イラン交渉で封鎖が終われば幸いだが、そうならなければどう対応すべきか。
3月の日米首脳会談前に、高市首相は国家安全保障局(NSS)や外務・防衛両省の幹部らと自衛隊派遣を検討した。機雷除去の掃海艇、調査・研究目的の護衛艦・哨戒機の2案が俎上に載ったが、いずれも憲法第9条が壁となり停戦前の派遣は不可能との結論だった。
9条の政府解釈は「自衛のための必要最小限度を超える武力行使」や「海外での武力行使」を禁じており、それが理由だ。
普通の民主主義国では、政府が状況を踏まえて軍派遣のタイミングを政治判断する。ところが日本は憲法がその判断自体を妨げる。
自衛隊派遣の選択肢を端から阻む現憲法を「平和憲法」と呼ぶのは大間違いである。
停戦がないままホルムズ海峡の通航が阻まれ続ければ、日本は「油断!」が描いた状況に陥りかねない。
その時、憲法を理由に海上自衛隊のタンカー護衛を放棄し、米国などの海軍にすがるだけなら、日本は蔑まれ、必要な石油は入ってこない。台湾有事抑止に不可欠な日米同盟の結束も瓦解する。高市政権や各党の危機感は不足している。
自民党は憲法への自衛隊明記を唱える。左傾化した憲法学者の違憲論を根絶し、明記を機に義務教育で抑止力などの防衛役割を教えれば、安保論議の底上げに意義がある。
ただし自衛隊明記だけではホルムズ海峡封鎖の危機に対応できない。9条2項の削除か、「芦田修正」に基づく憲法解釈変更が結局は必要だ。
緊急事態条項の創設も極めて重要だ。南海トラフ巨大地震や首都直下地震、富士山噴火などの災害に備えたい。台湾有事という人災から国民を守ることも欠かせない。
選挙が困難な場合の国会議員任期延長だけでは不十分だ。必要なのは、緊急時に行政府に一時的に権力を集中し、緊急政令で国民と憲法秩序を守ることだ。この国家緊急権は国際人権規約(B規約)が認める世界の常識である。憲法54条の「参院の緊急集会」では議員の衆知を集められず、議員自体が集まれない緊急事態には対応できない。
参院選での合区解消に重点を置く議論もある。論点として否定しないが、人口減少が急速に進む中、「47都道府県」が維持可能かどうかから論じるべきだ。議員の身分を守る改正ばかり前面に出して、国民の理解は得られまい。
日本と国民に資するためには、9条関連と緊急事態条項創設の改正が必要である。衆参各院の憲法審査会は条文化に着手すべきだ。