
ハイアットリージェンシー京都(京都市東山区)で5月27日に開催された京都「正論」懇話会の第82回講演会。神田外語大の興梠(こうろぎ)一郎教授が「中国を読み解く~いま何が起きているのか?」と題して講演した。主な内容は次の通り。
中国の公式メディアは実は重要な情報源であり、そこに中国共産党が最も伝えたい方針が示される。米中首脳会談(今年5月)の報道内容は大半が習近平国家主席の発言で、トランプ大統領の発言は少ない。これはいつものパターンだが、その中で「安定」という言葉が繰り返し強調されている。
「安定していたら安定と繰り返して言う必要はない」と興梠教授は指摘する。中国共産党は経済を何としても安定させたいと考えており、そのためには米中関係の安定が不可欠だと認識している。米中関係が安定しなければ、日本との関係も安定しないと理解している。
不動産市場の低迷やコロナ禍のロックダウンなど、自らの政策ミスで経済を痛めつけたことに加え、トランプ関税の打撃も大きい。
「とにかくトランプ氏と仲良くなって話をつけて安定させることで、少なくとも輸出を維持できる」と教授は分析する。内需が弱く消費や小売りが傷ついているが、貿易と輸出で稼いで補えるという期待がある。
もう一つの焦点は国内経済で、最も安定させたいのは雇用だ。都市部の失業率は16~17%に達し、仕事を失って農村に帰った若者を含めれば実際の数字はさらに悪化している。
不動産開発業者が資金繰りに困り、建設が途中で止まる事態が発生。不動産購入自体がリスクとなり、改革開放以降で初めての現象だ。この状況は地方財政を直撃している。
中国の土地はすべて国有地であり、地方政府は固定資産税を徴収できない。国民は国有地上の建物を使用する権利のみを購入し、その使用権の売却や入札によって地方財政が成り立っている。この仕組みが停止したため、地方財政は極度に逼迫し、公共サービスやインフラ投資に支障が出ている。
「中国は今、米国とケンカをしている場合ではない。日本ともケンカをしている場合ではない」と教授は強調する。日本の投資も必要であり、日本企業の流出は避けたい。しかし、台湾問題で高市早苗首相の発言撤回を求めた手前、自ら関係改善を提案できない立場にある。
日本人は控えめであまり言わないが、日本の対中投資は非常に大きい。工場を建設し雇用を創出し技術を提供して製品を生産している。これらの工場は地方にあり、中国の最高指導者もその重要性を認識している。
米中首脳会談で、トランプ氏と習近平氏は「イランは核兵器を保有してはならない」との認識で一致し、ホルムズ海峡の開放を求め、通行料の徴収を認めないことで合意した。これは注目すべき成果であり、中国はイランに直接言えない内容だ。
米国はこの合意を積極的に発表しているが、中国はほとんど公表していない。ただし、否定もしていない。これが首脳会談の最大のポイントだと教授は指摘する。
イランの石油の8~9割を中国が安値で購入しており、ダークフリート(闇の船団)がマレーシア沖で積み替えを行い中国に運んでいる事実を米国は把握している。これらの石油は山東省の「ティーポット」と呼ばれる製油所に流入しており、米財務省はこれに融資する銀行への制裁を示唆している。
「イランの原油は中国にとって大したことではないと言う人もいるが、そんなことはない」と教授は断言する。ホルムズ海峡をめぐる合意が今回の米中首脳会談の最も大きな成果であり、停戦に至るかどうかは別として、その意義は大きい。