
国立健康危機管理研究機構(JIHS)が、他国からの武力攻撃など国民保護法に基づく有事に備え、専門医療チームの創設を加速している。その背景には、東日本大震災で明らかになった、患者の移動に伴う多くの犠牲者という重い教訓がある。
復興庁のまとめによれば、東日本大震災と東京電力福島第一原発事故の際、避難所などへの移動中に肉体的・精神的疲労で死亡した人は、確認されただけで計401人に上る。医師でもある災害医療派遣チーム(DMAT)事務局長の小井土雄一氏は、「移動をするだけで多くの人が亡くなる可能性が高い。これが震災の大きな教訓だ」と語る。
JIHSが目指すチームは、こうした教訓を踏まえ、武力攻撃時にも迅速に患者を移動・治療できる体制を整えるものだ。小井土氏は「迅速に対応するため、このチームには大きな意義がある」と強調する。ただし、戦闘地域での医療活動に関する実績やノウハウは乏しいのが現状だ。
小井土氏は「特別な訓練を積むことで、体制を構築していく」と述べ、ゼロからの取り組みに意欲を示した。チームには、阪神・淡路大震災や東日本大震災などでの災害医療対応を経験した医師らも参画する予定という。
政府は、中国の軍事力拡大も念頭に、国民保護の枠組みを強化する方針を打ち出している。JIHSの動きはその一環であり、ノウハウ不足を補うための具体的な訓練計画が今後、焦点となるだろう。