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トリックを成立させるために人を殺める――それが文学といえるのか。長く直木賞選考委員を務めた作家・渡辺淳一氏はミステリー小説に絶えず疑念を突きつけてきた。その壁に泣かされた一人が東野圭吾さんだった。本日、東野さんの訃報が伝えられ、多くのファンに早すぎる旅立ちを惜しむ声が広がっている。
東野さんが直木賞に初めてノミネートされたのは平成11年。その後、『容疑者Xの献身』で受賞するまで5度の落選を味わった。同作は殺人の跡を消すため高校の数学教師が仕掛けた巧妙なトリックを、友人の物理学者が解き明かす物語。迫真の推理は多くの読者を魅了し、映像化もされるなど、東野ミステリーの金字塔となった。
受賞の舞台裏では、同じ選考委員の北方謙三氏による助勢もあった。「小説の枠を狭めぬためにもスタンスを広げた方がいい」と説く声に渡辺氏が折れたという。6度目のノミネートで悲願を実らせた東野さんは、当時の紙面で「やけ酒が飲めなくなる」と喜びのコメントを残している。
その後も東野さんは『白夜行』『ナミヤ雑貨店の奇蹟』など次々に傑作を生み出し、日本ミステリー界を牽引。作品は世界中で翻訳され、若い世代にも読み継がれている。その創作姿勢は常に読者を驚かせ、文学の可能性を広げるものだった。
東野圭吾さんが残した数々の作品は、時代を超えて多くの人々の心に刻まれるだろう。ファンはもちろん、同じ作家たちもその才能と功績をたたえ、早すぎる別れを惜しんでいる。心からご冥福をお祈りしたい。