
「食事の邪魔をしない」という評価で若者の心を掴んだサントリーのジン「翠(SUI)」と「ROKU〈六〉」が、国内外で驚異的な売れ行きを見せている。同社は急拡大する需要に応えるため、大阪工場の生産能力を2.6倍に引き上げる大規模投資を決定。総額65億円を投じたこのプロジェクトは、ジン市場におけるサントリーの本気度を如実に物語っている。
サントリーがジン事業に本腰を入れたのは約6年前。従来のジンは「薬臭い」「飲みにくい」というイメージが強かったが、新たに開発した「翠」はゆずや緑茶など日本の素材を活かし、すっきりとした味わいが特徴。一方「ROKU」は六種類の和素材をブレンドし、飲みやすさと個性を両立。特に20~30代の女性層を中心に「食事中でも邪魔にならない」と支持を集め、ジン市場に新たな旋風を巻き起こしている。
このブームの背景には、世界的なクラフトジンブームがある。サントリーも海外市場、特にアジア圏での販売を強化。輸出向けの生産を増やすため、大阪工場のジン専用蒸溜棟をフル稼働させる必要に迫られた。65億円の投資は、蒸溜設備の増設だけでなく、原料倉庫や品質管理ラボの拡充も含む。これにより生産能力は従来比2.6倍に向上し、年間約800万本の生産が可能となった。
サントリーの幹部は「ジンはウイスキーに次ぐ柱に育てる」と強調する。特に「翠」は低アルコール(37度)で軽やかな飲み口がハイボールやソーダ割りに合い、居酒屋や家庭でも広く受け入れられている。また、ボトルデザインにもこだわり、翠は瓶の形状を和テイストに、ROKUは六角形のラベルで和の美を表現。プレゼント需要も取り込む戦略が若者の支持に直結している。
今後の計画として、サントリーは2026年までにジン事業の売上高を現在の約1.5倍に拡大する目標を掲げる。国内はもちろん、米国や欧州、東南アジアへの輸出を強化する方針で、新たなフレーバーラインの開発も進行中だ。ジンは世界的にウイスキーや焼酎に比べて市場規模が小さいが、サントリーは「和クラフトジン」という独自のポジションで、世界市場での存在感を一段と高めようとしている。