
トモノリさん(64)は11年勤めた小さな会社を辞め、56歳でひきこもり状態となった。父親のがんによる死去や交際女性との別れが引き金となり、無力感だけが募っていた。
外出は3日に一度、深夜営業のスーパーでの買い物のみ。無職の後ろめたさから人目を避け、静岡県内のアパートで一人暮らしを続けた。トモノリさんは「これが中高年のひきこもりか」と自覚していた。
ひきこもり生活が2年ほど経ったころ、同じ市内で離れて暮らす母親(90)の異変に気づいた。電話で日付や曜日を何度も間違えるようになり、様子を見に行くと出されたカレーが異常に塩辛かった。
母親は認知症と診断された。きょうだいには仕事や家庭があったため、面倒をみるのはトモノリさんしかいなかった。トモノリさんと母親との2人暮らしが始まった。
介護を通じて、トモノリさんは少しずつ自信を取り戻していった。社会から孤立していた彼に、新たな役割と日常が生まれた。
No Comments