
踏切が鳴り、遠くからディーゼルエンジンの音が聞こえてくる。満開となった桜のトンネルを列車が抜けると、鉄道ファンが一斉にシャッターを切った。この春の風情は、もう来年には見られなくなる。
千葉県の県南、木更津駅から上総亀山駅間を走る全長32・2キロのJR久留里線。このうち、久留里駅から上総亀山駅までの9・6キロが来年4月1日で廃止される予定だ。過疎化や高齢化などで利用者の減少が続いており、JR東日本管内では被災路線を除いて初めての廃止となる。
同社によると同区間は令和6年度、300万円の運輸収入に対し、かかった費用は約2億円。利用者の減少で減便され、いまでは日中、5時間以上列車がない時間帯もある。
夕方、上総亀山駅で下車してきた高校1年の野村哲平さんは、4月に入学してから列車を使うようになった。「鉄道で通うのは新鮮。中学のときはスクールバスだったので」という。
久留里駅近くの県立高校に通う野村さん。帰路は1時間ほど列車を待つこともある。「来年からはバスを利用しようと思う。本数も増えるようなので」。廃止後は代替バスが運行される見通しで、JRはこの先18年間の費用を負担する。
終点の上総亀山駅近くに住む70代の女性は、駅を見ながらつぶやいた。約90年、地域を支えた鉄路は、もうすぐ姿を消す。
この記事を担当した記者は、2024年に入社した埼玉県出身のニュース担当。学生時代はスポーツ新聞部に所属し、特に駅伝とモータースポーツを好む。