
国連安全保障理事会(15カ国)の非常任理事国10カ国のうち、来年1月から2年間を担当する5カ国を選ぶ国連総会(193カ国)で3日、投票が行われた。アジア太平洋枠では、フィリピンを破り初選出されたキルギスが中国とロシアの支持を受けていたことが、シンガポールのチャンネル・ニュース・アジア(CNA)の4日付報道で明らかになった。安保理で中露の影響力が強まる可能性がある。
フィリピンは対中抑止で日米と連携を深める一方、キルギスは中国の巨大経済圏構想「一帯一路」に参加し、中国との結びつきを強めている。選挙結果にはアジア太平洋地域での日米と中露の緊張関係が反映された形だ。
CNAによると、フィリピンとキルギスが1議席を争ったアジア太平洋枠の投票では、キルギスが選出要件の賛成票3分の2を上回る142票を得るまで投票が4回繰り返された。フィリピンは徐々に賛成票を減らし、4回目の投票では49票にとどまった。
非常任理事国選は「秘密投票」で実施される。各国は投票先を明らかにしていないが、CNAは中露がキルギスを支持したと報道。長年、国連の動向を観察してきた政策研究機関「国際危機グループ」のリチャード・ゴーワン国連担当部長も「中国はフィリピンに投票しないよう各国に説得して回っていた」と振り返った。
3日の投票では、西洋その他の枠に立候補していた「安保理常連組」のドイツが、7度目の挑戦で初めて落選する波乱もあった。ウクライナ侵略で対立するロシアが反対運動を展開したほか、パレスチナ自治区ガザ戦闘やイラン攻撃で米国やイスラエルと歩調を合わせるドイツの態度が、グローバルサウス(南半球を中心とした新興・途上国)の一部の国を遠ざけた可能性がある。
「グローバルサウスを代表する声になると訴えた戦略が奏功した」。キルギスのクルバエフ外相は初選出を決めた後、総会議場前でこう笑顔で語り、「今は激動の時代だ。責任の重さを認識している」と表情を引き締めた。
キルギスは日米とも良好な関係を維持する。また、非常任理事国に安保理の意思決定への拒否権はなく、その影響力は限られる。ただ、キルギスの初選出には中露の支持が働いたとの取材から、CNAは中露の影響力が安保理で強まる可能性があると伝えている。
3日の総会では、キルギスのほか、オーストリアとポルトガル、トリニダード・トバゴ、ジンバブエの5カ国が新たな非常任理事国に選出された。(平田雄介)