
鉄道博物館(さいたま市)の象徴的な存在である「C57形135号機」は、北海道・室蘭線で国鉄最後の定期旅客列車をけん引した蒸気機関車として知られる。
この135号機は「百恵ちゃん号」の愛称で親しまれていた。当時アイドルだった山口百恵さんがNHKの番組で乗車したことが由来だ。
昭和50(1975)年12月14日。早朝から最後の雄姿を一目見ようと、始発駅の室蘭には大勢の鉄道ファンが集結。ホームでは出発式が行われ、当時国鉄理事だったソニーの井深大会長らが機関士姿で駆けつけた。
中学生だった私は8ミリカメラ、父(植村昭次郎)は一眼レフを手に1号車に乗り込んだ。車内はすし詰め状態で、窓から強引に乗り込む強者もいた。
午前7時58分、定員の3倍にあたる約2000人を乗せ、「蛍の光」の生演奏が流れる中、ゆっくりと発車した。
鉄道博物館に静態保存されている蒸気機関車「C57 135」。1日2回、汽笛を鳴らしながら転車台が回転する=5月22日、さいたま市(植村光貴撮影)
「昭和15年に製造され、群馬県の高崎機関区を皮切りに活躍。325万キロ走りました。地球を81周したことになります」
室蘭線の中間点にあたる苫小牧駅構内は人であふれかえり、線路横の給水スタンドに上る人もいた。大きな汽笛を響かせた135号機は、人混みをかき分けるように黒煙を上げながら終着駅の岩見沢を目指して走り去った。その名残を父はフィルムにとどめた。
手を振る蒸気機関車「C57 135」の機関士=室蘭線(植村昭次郎さん撮影)
かまの火が消えた135号機は翌年、東京・神田にあった交通博物館へ。閉館後は鉄道博物館に展示されている。
再び動かすことはできるのか。学芸員の葛西寅彦さん(64)は「可能だと思う。ただ一番の問題は技術的なことより、(整備などにかかる多額な)費用」と話す。
歴史的な車両に囲まれ転車台に鎮座する「C57形135号機」。1日に2回、当時と同じ音色の汽笛を響かせている。(写真報道局 植村光貴)