
2060年代の日本。人口は8000万人を割り込み、少子高齢化は加速度的に進んでいる。政府は打開策として、高度な人間模倣知能を搭載したアンドロイド「イミト」を労働力として導入。さらに、結婚や出産を前提とする“練習台”として、家庭で育てる「イミト里親制度」を新たに打ち出した。この制度の目的は、ベビーイミトに家庭内での愛情体験を学習させることで、知能をより人間らしく進化させることにある。
そんな中、主人公となるのは、長年すれ違いを続ける30代の夫婦だ。夫はかつての過ちを悔やみ、関係をやり直したいと願っている。一方、妻は仕事も家事も完璧にこなす超スペックな女性だが、夫への不信感は拭えない。2人は不妊治療に挑むが、気持ちは全く噛み合わず、子どもを持つことにも互いと向き合うことにも疲れ果て、ついに離婚を決意する。
その矢先、自治体から一通の通知が届く。無作為抽選で「イミト里親制度」の対象に選ばれたという。困惑しながらも、条件を確認すると、受け取りを断れば多額の罰金が課せられる。半ば強制的に引き取ることになった“赤ちゃん”は、本物さながらの肌触りと泣き声を持つベビーイミトだった。
最初は戸惑いだけが先行する。育児経験のない2人が、人工知能の乳児と向き合う日々が始まる。ミルクをやり、おむつを替え、夜泣きに付き合う。そんな繰り返しの中、妻は次第に“母としての役割”に没頭し、夫もまた、子どもの笑顔に心を開き始める。互いに避けていた会話が、ふとした瞬間に生まれるようになる。
漫画『イミト~人工模倣知能』の第2章「ベビーイミト編」は、こうした近未来の家族の姿を、チャン・メイさんが繊細なタッチで描き出す。科学技術の進歩がもたらす倫理的な問いと同時に、人間の愛情がどこまで人工物に宿るのか――その境界線を揺さぶる物語が、読者の胸に迫る。