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広島県・大久野島は、かつて毒ガス製造の拠点という重い歴史を背負いながらも、今や「うさぎの島」として年間20万人を超える観光客が訪れる人気のスポットだ。だが、その活況の裏で、地元経済への恩恵は乏しく、観光客の多くが日帰りで「素通り」していく現実がある。
大久野島は、太平洋戦争中に毒ガスが製造された歴史を持つ。戦後は島全体が「毒ガス資料館」のある平和学習の場としても注目され、1990年代以降、野生化したうさぎが観光資源として脚光を浴びるようになった。現在では島内に数百羽のうさぎが生息し、餌やり体験目当ての観光客が絶えない。
観光客の増加は、島へのアクセスとなる忠海港のある竹原市にとっても無視できない現象だ。しかし、多くの観光客はフェリーで島に渡り、数時間で帰ってしまう。「素通り」状態が続くことで、島内には売店や宿泊施設の整備が追いつかず、地元が観光の恩恵を享受しにくい構造が指摘されている。
さらに、観光客が増えることで、うさぎへの餌やりによる健康被害や糞尿による環境汚染、観光マナーの問題も顕在化している。島を訪れる人々と、そこで暮らすうさぎや自然環境との共存が、新たな課題として浮上しているのだ。
こうした状況を打開しようと、竹原市や関係団体は「滞在型観光」への転換を模索している。島内の旧兵舎を活用した宿泊施設の整備や、歴史を学ぶプログラムの充実など、廃墟となっていた建物を再生しながら、観光客に長く留まってもらう取り組みが始まっている。「うさぎの島」は、単なる写真映えのスポットから、学びと体験の場へと変わろうとしている。