中国依存が脅かす日本の抗菌薬 国産化進むも薬価低く持続困難 国の支援急務

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Mika Nakamura
科学 - 17 5月 2026

中国が周辺への軍事的圧迫を強める中、日本の医療を支える抗菌薬の中国依存が国家的リスクとなっている。政府は原薬の国産化にかじを切り、明治製菓ファルマ(現Meiji Seikaファルマ)や塩野義製薬が製造に着手した。ただ、抗菌薬は巨額の製造コストに対して薬価が低く採算が立ちにくいため、事業継続に不安が残る。どのような国際環境でも医療を守るために、国による支援の具体化が急務だ。

肺炎治療や手術時の感染予防に欠かせない抗菌薬は、医療の基盤を支える国民の生命線だ。厚生労働省によると、注射剤の中心である「ベータラクタム系」抗菌薬の原薬はほぼ100%を中国に依存し、国内で一から製造することはほぼ不可能な状態が続いている。

この構造的な脆弱性はすでに表面化している。2019年には中国の原薬工場のトラブルで国内のジェネリック医薬品メーカーが抗菌薬の供給を停止し、全国で手術延期が相次いだ。塩野義製薬の手代木功会長兼社長は「再び起きたら日本の抗菌薬はどうなるのかと背筋が寒くなった」と語る。

依存構造の背景には、薬価の度重なる引き下げによる採算悪化がある。他剤への混入防止に専用設備が必要なベータラクタム系は特に負担が大きく、1990年代以降の継続的な薬価引き下げで国内製造は立ち行かなくなった。

多くのメーカーが原薬製造を中国に移転し、Meijiもその一社だ。小林大吉郎会長は「経済合理性が失われていった」と振り返る。

以前は2年に1度だった薬価改定は毎年行われるようになり、事業環境はさらに厳しくなっている。手代木氏は「1バイアル(小瓶)の抗菌薬の薬価はペットボトル飲料より安い」と明かす。

国際環境の緊迫化などを踏まえ、国は2022年、供給途絶が国民生活に影響する経済安全保障推進法上の「特定重要物資」としてベータラクタム系抗菌薬を指定した。国産化事業としてMeijiや塩野義の生産子会社シオノギファーマの設備投資への資金的支援を始めた。

Meijiは今年10月に岐阜工場(岐阜県北方町)で原薬の前段階の原料生産設備を完成させ、稼働を開始。撤退から約30年ぶりの国内製造を再開した。年間200トンの原料生産が可能となり、小林氏は「社員は誇りを持って取り組んでいる」と胸を張る。

一方、シオノギファーマも手術などで使う抗菌薬を原料から製造する態勢を構築中だ。国内で原料・原薬製造を知る技術者は限られ、工場整備も一からだが、手代木氏は「国内でつくれる能力だけは絶対に失ってはいけない」と意気込む。

国は2030年までに抗菌薬の安定供給体制を整備する目標を掲げる。ただ、製品の買い上げ支援などの工場稼働継続に向けた具体策は明確に決まっておらず、自給自足体制が整っても莫大な製造コストを回収できる保証はない。手代木氏は「(建設に)700億円、800億円かかるような工場をゼロから建てることで本当にペイラインに乗るのか」と懸念を示す。

平時から工場を稼働させ、有事でも必要な供給を確保するには、国産抗菌薬の薬価をコストに見合う水準に調整し、輸入原薬との競争力も確保する必要がある。小林氏は「抗菌薬生産は地政学リスクに備える国家的役割だが、企業だけでは限界がある。社会全体で薬を守る仕組みが必要だ」と訴える。

医薬品のサプライチェーンで中国依存から脱却することは海外でも共通の課題だ。欧州連合(EU)は抗菌薬など重要医薬品の安定供給に向け、域内の製造能力を強化する新たな法制度整備を目指している。

EUの法案では、重要医薬品や原料の生産拡大を「戦略事業」と位置付け、許認可手続きの迅速化などの優遇措置を講じる。事業には加盟国やEUの予算による財政支援を優先的に受けられる一方、EU域内への供給を優先する義務を負う。

米国は感染症対策を国防政策の一環として明確化し、新型コロナ禍を経て一定量の備蓄や国内生産の強化に踏み出した。長崎大の迎寛教授(感染症)は「米国では(医薬品確保が)国防と位置づけられ、軍関連の研究機関にも予算が投入されている」と説明する。

中国はレアメタルの輸出制限などの経済的威圧を繰り返してきた経緯がある。迎氏は「抗菌薬は命に直結する物資だけにレアメタル以上に深刻だ」と指摘。「危機感は国も把握しており、前進している。ただ、事業継続にはさらに踏み込んだ支援が必要だ」と訴える。

高市早苗首相が国会で答弁したような台湾有事が発生するとすれば、緊張状態から実際の軍事衝突に至るまで数週間から数カ月程度と想定される。企業はこの限られた期間での対応を迫られる。

米国や日本が制裁措置を講じた場合、中国からの重要原材料の輸出制限対象が拡大されるリスクがある。また台湾有事に限らず、工場トラブルや災害など予測不能な事態は今後も起こり得るため、一つの国への依存は大きなリスクだ。

企業は状況を把握し、平時からサプライチェーンの寸断に備えることが不可欠だ。原材料調達が途絶えた場合の代替調達は難しく、あらかじめ在庫を積み増すことや生産拠点の分散が鍵となる。

国内生産への回帰はコスト上昇や人手不足の問題で容易ではない。政府の支援は評価できるものの、そもそも中国移転が進んだ背景には中国産の価格優位性が大きい。国内回帰によってどのように事業を安定させるのかが大きな課題となっている。

編集部注:この記事はAIを使用して作成されており、産経新聞の記事を元に、内容を変更せずにリライトしたものです。
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