
近年、学校の水泳授業が廃止または縮小されるケースが相次ぎ、その結果として「泳げない子ども」が急増している。文部科学省の調査によると、全国の公立小中学校でプールを保有する割合はこの10年で約10ポイント低下し、老朽化や維持費の高騰が背景にある。
学校プールの維持には年間数百万円のコストがかかり、特に人口減少地域では修繕費が予算を圧迫している。さらに、水質管理や安全確保のための人材不足も拍車をかけ、多くの自治体が授業の外部委託や廃止を選択している。
泳げないことによるリスクは深刻だ。水難事故は毎年1000件以上発生し、未就学児から中学生までの溺水死は後を絶たない。「命を守る基本的な技能としての水泳は、単なる体育の一分野ではない」と、水泳指導の専門家は指摘する。
こうした状況下で、家庭や地域社会の役割が問われている。民間スイミングスクールへの通塾や、親子での水遊びを通じた水慣れの機会を増やすことが、緊急時の対応力を養う一助となる。
しかし、経済的格差が泳力の格差にも直結しかねない。公的な支援や地域での安全な水泳環境の整備が急務だ。学校に頼れない時代、社会全体で子どもたちの命をどう守るか、今こそ議論を深める時である。