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宮崎県日南市の城下町・飫肥(おび)で、築100年の洋館「旧梅村邸」をベーカリーカフェとして活用する準備が進んでいる。「九州の小京都」と呼ばれる同市の中心部にたたずむこの建物は、大正末期の1926年に建築された木造2階建て。漆喰(しっくい)の装飾や格子の上げ下げ窓など和洋折衷の美しさが特徴で、地元では貴重な文化財として親しまれてきた。
仕掛けたのは、洋館の向かいに会社事務所を構える建築家の鬼束準三さん(42)だ。「洋風の美しさもある貴重な存在。未来に残って欲しい」と語る鬼束さんは、自ら土地と建物を取得して活用策を考えた。会社設立当初から「だれかが活用してくれないかな」と見守ってきたが、一度現れた引き受け手がコロナ禍で断念。「時がたつと街の課題を毎日、目の当たりにしている気分になってきた。他人ごとではなく、自分の問題に変わってきた」と振り返る。
鬼束さんは東京の設計事務所などで経験を積んだ後、2014年に地元へUターン。2017年に設計デザイン会社「PAAK DESIGN」を立ち上げ、古民家を改装したホテル運営なども手がけてきた。今回のプロジェクトでは、洋館の持つ歴史的な雰囲気を損なわないよう、内装や設備の改修を進めている。
旧梅村邸は長年空き家となっていたが、鬼束さんが取得したことで新たな息吹が吹き込まれる。カフェでは地元の小麦を使ったパンや焼き菓子を提供する予定で、観光客だけでなく地域住民の交流の場としても機能させたい考えだ。周辺には武家屋敷や資料館が点在し、散策の拠点としても期待されている。
鬼束さんは「この建物を後世に残すためには、多くの人に愛される場所にしなければならない」と話す。洋館の再生は、飫肥の町並み保存と観光振興の新たなモデルケースとして注目を集めている。