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シンガポールで1パック2000円の日本産イチゴ「SAKURA DROPS」—高速育種と垂直統合モデルが生む成功

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Yuki Tanaka
経済 - 05 7月 2026

シンガポールで、1パック2000円の日本産イチゴ「SAKURA DROPS(サクラドロップス)」が飛ぶように売れている。

現地の「DON DON DONKI」7店舗で販売され、一般的なイチゴ(1000~1500円)よりはるかに高価にもかかわらず、入荷するとすぐに品切れになる。手掛けるのは2017年創業の農業スタートアップ、CULTA(東京都小金井市)だ。輸出先はシンガポールのほか、マレーシア、香港、タイ、米国へと広がっている。

同社の競争力を支えるのが、高品質な品種を短期間で生み出す開発力だ。通常10年ほどかかるイチゴの新品種開発を、わずか2年で実現。自社で品種開発に着手してから3年で4品種のイチゴを開発した。

主力の「SAKURA DROPS」に加え、白いイチゴの「YUKIMI DROPS(ユキミドロップス)」などを販売する。2026年3月には、事業初期段階の「プレシリーズA」で7億円を調達した。

CULTAのビジネスモデルも特徴的だ。開発した品種の栽培を農家に委託し、収穫物を全量買い取り、ブランド化から販売・輸出まで一貫して手掛ける。同社はこれを「垂直統合型ビジネスモデル」と呼ぶ。

手本とするのは、キウイで世界市場を築いたニュージーランド企業「ゼスプリ」だ。品種開発とマーケティングを一体で手掛けるこのモデルで、農業の産業構造そのものを変えようとしている。同社CEOの野秋収平氏に、その戦略を聞いた。

ビジネスモデルの話に入る前に、CULTAの土台にある技術を紹介しよう。

同社の品種開発は、ゲノム編集や遺伝子組み換えではない。異なる親をかけ合わせ、生まれた多数の子から目的に合うものを選び抜く「交配育種」を高速化したものだ。交配育種そのものは150年以上の歴史を持つが、もともと時間がかかる。狙い通りの品種が生まれる確率は低く、有望な個体を見極めるには栽培と選抜を何年も繰り返す必要がある。イチゴでは1品種が世に出るまでに10年前後かかるとされる。

CULTAは、この「成功確率の低さ」と「選抜期間の長さ」という2つの壁を技術で乗り越えた。成功確率を高めるために使うのが、ゲノム解析とフェノタイピング(糖度や硬さなど果実の特性を数値化する技術)だ。

自社で育てた数千個体について、遺伝情報と特性データをひも付け、AIで「どの親同士をかけ合わせれば、甘みが強く硬度があるなどの狙った特性を持つ品種が生まれやすいか」を予測する。やみくもにかけ合わせるのではなく、当たりの確率が高い組み合わせを狙う。

選抜期間を短縮するためには人工環境を活用する。通常の栽培ではイチゴを育ててその品質を評価できるのは年に1回だが、温度や養液を細かく制御した環境で開花を早めることで、年3回の育種サイクルを実現した。試行錯誤を短期間で繰り返せるため、有望な個体にたどり着くまでの時間を大幅に縮められる。

一般的に輸出向けのイチゴは輸送中の傷みを避けるため、熟し切る前に収穫することが多い。しかし、硬く傷みにくい品種なら完熟してから収穫できるため、シンガポールの店頭でも甘い状態で販売できる。「2000円でも売れるイチゴ」の理由はここにある。最大の競合である韓国産より価格が1.5~2倍ほど高くても選ばれるのは、この品種開発力があるからだ。

高速育種で生んだ品種を、どう売るのか。ここに、事業成長の核となる「垂直統合型ビジネスモデル」がある。従来は、品種を開発する人、生産する人、販売する人がそれぞれ別だった。これに対し、CULTAは品種開発から栽培(委託)、収穫物の全量買い取り、ブランド化、販売・輸出までを一貫して担う。

このモデルなら、消費者ニーズを起点に品種を設計できる。例えば香港や東南アジアには、珍しい色のイチゴを贈り物にする文化があり、白やピンクのイチゴに一定の需要がある。だが従来のこうしたイチゴは見た目の珍しさが先行し、味が伴わずリピートされにくかった。

「珍しい色というだけで味が伴わなければ、一度は手に取られてもリピートされない。色を変え、そこに食味を掛け合わせれば買い続けてもらえる」と野秋氏は話す。何が売れるかを自社で把握しているからこそ、市場ニーズに合わせて、輸送性や食味に優れた品種を開発できる。

また、このモデルは生産者側にもメリットがある。CULTAは開発した品種の栽培を生産者に委託し、収穫したイチゴを原則として全量買い取る。生産者が売れ残りのリスクを負わずに、新品種の栽培に取り組めるようにする狙いがあるという。さらに、品種ごとの栽培方法の違い(温度管理や肥料の量など)を生産者に共有することで、品質の安定化を図っている。

この垂直統合モデルの手本が、キウイで世界市場を築いたニュージーランド企業「ゼスプリ」だ。野秋氏がゼスプリから学んだことは、大きく2つある。事業の競争力を左右するのは品種開発だということ。もう一つは、その品種開発とマーケティングを同じ主体が担うことだ。

その考え方を象徴するのが、ゼスプリが開発したゴールド系品種だ。従来のグリーンキウイに加えて投入したゴールド系品種が、ゼスプリの成長をけん引してきた。その勢いは現在も続いている。報道によると、2025~26年シーズンの世界販売額は59億ニュージーランドドル(2026年6月のレートで約5500億円)に達し、過去最高を記録している。野秋氏は「品種一つが事業に与えるインパクトが、これほど大きいのかと驚いた」と振り返る。

品種とマーケティングを一体で担う強みは、販売戦略にも表れている。ゼスプリはゴールドとグリーンの売り場構成を国ごとに変えているという。日本や中国では甘みの強いゴールドを前面に出す一方、欧州では手ごろな価格でビタミンCを摂取できるグリーンを多く並べる。

「フルーツを食べる理由は、国によって異なります。どの国にどの商品を出すかは、品種開発とマーケティングをセットで持っていなければ取れない戦略です」と野秋氏は説明する。

CULTAも同様に、市場ごとに求められる色や味、輸送性を備えたイチゴを開発し、自社ブランドで販売する。品種開発から販売までを一貫して担うからこそ、「どの国に、どんなイチゴを届けるか」まで設計できる。

委託生産による量産体制も拡大している。一般的なイチゴ農家の作付面積は20~30アール(1アール=100平方メートル)ほどだ。CULTAも栽培初年度はその1戸分に相当する規模だったが、次年度には国内有数の生産法人に並ぶ約3ヘクタール(1ヘクタール=100アール)規模まで拡大する見込みだという。

同社はイチゴの先に広がる巨大市場にも目を向けている。同社によると、気候変動の影響を受けやすい、フルーツやコーヒーなどの嗜好作物(15品目)の市場規模は約120兆円に上るという。主食である穀物の160兆円に匹敵する。にもかかわらず、これまで品種開発は公的機関や財団が担うことが多く、民間企業の参入は少なかった。

さらに、気候変動の影響で、春や秋にも気温が高い日が増え、イチゴの安定確保が難しくなっているという。暑さに強いなど、環境変化に対応した品種を短期間で開発できる同社の技術は、こうした環境下で大きな強みになる。

「2032年には売上高300億円」――もっとも、この数字はイチゴだけで描く目標ではない。イチゴはあくまで起点で、すでにブドウやリンゴなどのフルーツにも着手しているという。最終的には、気候変動の危機にさらされる15品目を手掛けることを目指す。

さらなる海外展開を見据え、生産体制と知財の両面で基盤づくりを進めている。生産面ではマレーシアでの栽培を本格的に開始。2027年中に5万平方メートル規模の栽培面積の確保を目指し、供給が細る夏場の安定供給や輸送コストの削減につなげる狙いだ。

もう一つの備えが知財だ。かつてシャインマスカットが海外で無断栽培され、歯止めをかけられなかった問題があったが、その一因は、品種名と商品名が同じだったことにある。品種名は制度上、商標登録ができないため、海外で同じ名前のまま販売されても止めにくかった。

そこでCULTAは、品種名を「カルタT3L」とし、店頭に並ぶ商品名「SAKURA DROPS」と切り離した。商品名を商標として登録しておけば、仮に苗が外部へ流出して栽培されたとしても、「SAKURA DROPS」の名前は使えず、無断で使われた場合は差し止めを求められる。育成者権(開発された新品種を保護する知的財産権)と商標は、生産国や販売国だけでなく、苗の流出リスクが高い国も含めて国内外で出願する。生産者とは契約で苗の第三者提供を禁じるなど、流出防止策も講じている。

品種を生み出し、育て方を支え、ブランドとして売り、その権利まで守る。CULTAは、品種開発から販売、知財までを一貫して担うことで、農業そのものの構造を変えようとしている。

編集部注:この記事はAIを使用して作成されており、産経新聞の記事を元に、内容を変更せずにリライトしたものです。
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