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第2回鉄道技術展・大阪2026(主催・産経新聞社)で行われた特別講演「鉄道業界の課題と未来」では、JR東日本代表取締役副社長・イノベーション戦略本部長の池田裕彦氏と、JR西日本理事・鉄道本部副本部長・イノベーション本部長の田淵剛氏(6月18日付でJR西日本レールテック代表取締役社長就任予定)が、技術部門のトップ対談に先立ってそれぞれ講演した。
JR東日本と西日本は、人口減少や自然災害、担い手不足といった共通課題にどう向き合うのか。本稿では、自動運転や脱炭素、DX(デジタルトランスフォーメーション)、オープンイノベーションなどを軸に、両社の技術戦略の現在地を紹介する。
JR東日本はグループ会社、パートナー会社含め社員が約10万人、一日あたりの利用客数は延べ3500万人にのぼる。首都圏、上信越、東北エリアを事業エリアとして管轄している。間もなく国鉄の分割民営化から40年だが、国鉄時代の駅に比べ現在はホームドアの設置など安全性が向上し、保線作業も多くが機械化している。東北新幹線は当初の時速210キロから、現在は最高時速320キロで運行して速達性を提供できている。
鉄道を維持していくためにはたくさんの課題がある。1つは人口減少。生産年齢人口も減る一方で、あと四半世紀たつと青森県、秋田県は生産年齢人口が今までの半分を切ってしまう。非常に大きな課題だ。
2つ目が自然災害。2019年に台風19号の大雨で堤防が決壊、長野県の新幹線車両センターが水没したことは記憶に新しい。
3つ目はエネルギー問題。自然エネルギーを活用しつつ、ゼロカーボンをどういうふうに実現していくのか。
生産年齢人口の減少に対してはメンテナンスを軽くしていくのが大きな方針になる。その点で威力を発揮するのが、当社が開発した無線式の信号制御システム、列車制御システム「ATACS(アタックス)」だ。無線式にすると地上の設備はかなり軽くなり、保守作業も減る。2011年に仙石線で初めて導入し、首都圏では2017年、埼京線に採用された。今後、山手線、京浜東北線といった重要線区に導入したい。
将来、ドライバレス運転の導入は避けて通れない。ATACSの導入によってそれが実現する見通しが立つ。
現在、新幹線でドライバレス運転の導入を検討している。2028年度頃に上越新幹線の長岡駅から新潟新幹線車両センター間の営業列車と回送列車の自動運転(GOA2)、さらに29年度以降には新潟駅~新潟新幹線車両センター間の回送列車のドライバレス運転(GOA4)導入を目指したい。JR西日本と共同でさまざまな技術提携をして、北陸新幹線の方でも導入できるように議論している。
東日本大震災で被災した気仙沼線、大船渡線という2つの地方の路線でBRT(バス高速輸送システム)を運行している。バスのドライバー不足も非常に重要な課題。バスの自動運転も手がけており、5月から自動運転レベル4走行を実施している。新しい地方のモビリティのあり方も提案していきたい。
JR西日本が開発した線路付近の樹木を伐採するロボットを投入するなど他社との連携も進んでいる。連携先は必ずしも鉄道事業者とはかぎらない。スタートアップが開発した落とし物の検索システム「find(ファインド)」だが、JR九州、京王電鉄が導入し、よい評価を聞いてわれわれも導入した。落とし物を返す時間が非常に短縮し、返還率も上がる。
DXを生かした将来像について、Suicaでは今年の秋からコード決済「teppay(テッペイ)」を開始し、2万円のチャージ上限を撤廃する。各自治体の行政サービスをSuicaで提供できるようなことも手がけていく。上越新幹線の新潟と長岡の間で顔認証方式のウォークスルー改札の実証実験を行った。高輪ゲートウェイシティ、大井町TRACKSではUWB(超広域帯無線通信)方式のウォークスルー改札の体験会を実施したが、ベビーカーや車椅子の方などに特に好評だった。
水素社会の実現、ドローンや人型ロボットなどの活用、自動運転なども含め、次世代のモビリティの実現に多方面の方々と連携していきたいと考えている。
JR西日本が目指す将来について、国鉄分割民営化からの鉄道技術の磨き上げ、現在の重要リスク、本日公表した技術ビジョン、新技術の活用、地域貢献や環境施策を含む2030年度への中期経営計画などの順に説明する。
国鉄民営化からの車両の技術変遷では、速達化、快適性、サービス向上を図りながら、安全性、生産性の向上を目指して進んできた。レールの延命、コスト削減を喫緊の課題としつつ、新幹線の脱線防止技術、現在では専用計測車両にセンサーやカメラを搭載し、走行しながら線路周辺の設備などを高精度で測り3次元データ化するモービル・マッピング・システムの本格運用といった変遷をたどっている。
電気技術では、運行管理システム、CTC(列車集中制御装置)といった取り組み、メンテナンスの簡素化と安定した電力供給が可能なハイパー架線、踏切の安全性の向上、現在では多機能鉄道重機の開発、導入と変遷してきた。
防災技術では、湖西線で「比良おろし」という強風に悩まされており、防風柵、斜面の防災対策を重点的に強化してきた。踏切の安全性の向上では、さまざまな装置、センサーを導入しつつ、車などの閉じ込めを防止するためスリット遮断棹(かん)などを開発し、踏切障害事故は激減した。車両、施設、電気の融合的な技術の進化が事故防止につながっている。
天候の悪化が予想される場合など、2014年から計画運休をはじめ、利用者の負担を減らす工夫をしてきた。保線業務などで働く仲間の命を守る取り組みとして、GPSを活用し、列車の見張りの数も減らしながら、安全性向上に努めた。
鉄道にはどんなリスクがあるか。人手に依存した作業が多い、災害疫病の影響、サプライチェーンの維持などがあり、鉄道会社としては生産性を上げ、スリム化し、意思決定のスピードアップを図る。そのために鉄道会社、あるいは社外の方々との連携共創が不可欠だ。
新しい技術ビジョン~技術で動かす、心と未来~では、モビリティの安全性向上と持続的な進化、生き生きとした便利で豊かな暮らし、カーボンニュートラルも含めた持続可能な社会の実現などを柱としている。われわれは新技術を使う前に、これまで蓄積された膨大なナレッジがあり、基盤技術を進化させることがスタートとなる。
物理的現象、構造、故障メカニズム、そして防災の理解があってこそ、新しい技術を探索できる。デジタル技術やロボット技術を活用し、データによる傾向分析を徹底し、故障などの予兆を把握しながら、基盤技術にしていくというスパイラルアップを目指していきたい。
モビリティサービスとまちづくりの連携による地域の魅力向上、それと地域交通の再構築や利便性と社会の持続可能性の向上も大きなテーマだ。鉄道とバスの自動運転、ロボタクシーなどが集まって利用者がシームレスに行きたいところに行ける姿を目指す。
また、鉄道と地域の脱炭素化にも貢献したい。次世代バイオディーゼルを岡山地区で導入しているが、将来的には水素ステーションを中心としたモビリティに大きく貢献したい。