
奈良女子大学の「アジア・ジェンダー文化学研究センター」が、本年3月末をもってその歴史に幕を閉じた。同センターは約20年間にわたり、ジェンダー分野における若手研究者の育成や国内外の大学との交流において、中心的な役割を果たしてきた組織である。お茶の水女子大学と並び、国内に2校しかない国立女子大学として、同大学が今後どのような研究体制を築くのか各方面から注目が集まっている。今回の閉鎖は、大学全体の将来を見据えた組織改編の一環として断行されたものだ。
背景には、国立大学を取り巻く厳しい財政状況と、それに対応するための抜本的な組織見直しの動きがある。高田将志学長(66)は現在の運営状況について、「国立大学は国の運営費交付金の減少で厳しい運営を強いられている。奈良女子大も従来型の手法を変えないといけない時期に来ている。同センターだけでなく、学内の様々な組織を見直そうという動きの中で検討を進めてきた。」と説明した。大学の持続可能性を確保するためには、既存組織の再評価が避けられない局面にあることを示唆している。
閉鎖の決定が下された一方で、同センターがこれまでに果たしてきた役割や研究成果は、大学側からも極めて高く評価されている。ジェンダー研究の視点を学内に浸透させ、アジアにおける女性リーダーの育成拠点として機能してきた実績は、同大学の学術的アイデンティティを支えてきた。高田学長は「学内にジェンダー研究の視点を根付かせ、アジアの女性リーダー育成拠点として貢献してきた歴史的な意義は大きかった。本学ならではの素晴らしい研究成果を多く生み出してきたことも高く評価できる。」と、その功績を改めて称えた。
一方で、社会的なジェンダー意識がかつてないほど高まっているこの時期に、なぜ研究拠点を閉鎖するのかという疑問の声も上がっている。これに対し、大学側は単なる縮小ではなく、研究分野の拡大と融合を見据えた発展的な解消であることを強調した。これまでの研究体制が抱えていた人文系偏重という課題を克服し、より広範な視点を取り入れるための決断であったとされる。今後は、全学的な協力体制のもとで新たな研究の形を模索していく方針だ。
今後の展望として、人文科学のみならず自然科学や工学の知見を融合させた、新しい形のジェンダー研究の構築が期待されている。高田学長は将来のビジョンについて、「同センターは人文系が中心だった。しかし、本学には理学部や生活環境学部、工学部といった理系分野もある。今後はこうした研究分野からの参加も必要だと考えた。」と述べ、研究体制の刷新に強い意欲を見せた。理系分野も擁する国立女子大学としての強みを最大限に活かし、多様な専門領域が交差する次世代の学問領域を目指す考えだ。
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