
煙を吐きながら急勾配を登る蒸気機関車(SL)。機関助手が石炭をくべ、蒸気のバルブをこまめに調整する。天候などその日の状態に応じて微調整が必要なSLは、現代の電車とは勝手が違う。
埼玉県内を走る秩父鉄道では、SLが「動く産業遺産」として往時の息遣いを今に伝えている。
秩父鉄道は明治34年、前身の「上武鉄道」として熊谷~寄居間が開業。昭和5年に秩父本線の全線にあたる羽生~三峰口間が開通した。旅客輸送のほか、木材や武甲山で採取される石灰石の貨物輸送で発展した。
沿線の観光客や鉄道ファンに手を振るSLの乗客や車掌ら =埼玉県皆野町
開業当初、列車はSLで運行されていたが、大正12年、電化などを背景に秩父鉄道からSLは姿を消した。
転機は昭和63年に訪れる。埼玉県熊谷市で開催された「さいたま博覧会」に合わせて、同県旧吹上町(現鴻巣市)内の小学校で保存されていたC58形363号機を整備して走行できるように復元、「SLパレオエクスプレス」として運行を開始した。
機関士の黒沢勇樹さん(39)は「SLは電車やディーゼルカーとは全く違う」と力説する。10年以上SLを運転する黒沢さんは、経験や勘を基に蒸気の圧力を微妙に調整し、乗り心地良く運転するように心がけているという。
SLパレオエクスプレスの今年の運行は、3月下旬から12月初旬の土日祝日を中心に熊谷(熊谷市)~三峰口(同県秩父市)間で行われる。乗車には乗車券のほかにSL指定席券(1000~1100円)が必要。
昭和51年、途絶えていた蒸気機関車(SL)の営業運転が再開されました。その輪は全国へと広がり、現在では各地で観光列車として運行されています。近代産業遺産として大切に運行されているSLの雄姿を不定期で連載します。