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若手の不足と高齢化が進む自動車整備業界。電子制御化や自動ブレーキ搭載の義務化など、技術の高度化に伴う設備投資の壁も重くのしかかる。中東情勢の不透明感による納入不安やコスト高の長期化が経営を圧迫し、事業をたたむ整備事業者も少なくない。その結果、愛車を預ける場所を失う「整備難民」が増える懸念が高まっている。
こうした課題に立ち向かおうと、岐阜県で一つの地域連携モデルが成果を上げている。旗振り役は、トヨタグループの部品商であるトヨタモビリティパーツ株式会社岐阜支社(中西直孝支社長、以下TMP岐阜支社)。2022年2月に発足した「トヨタモビリティパーツ岐阜パートナーズクラブ(TMP岐阜PC)」は、部品供給の枠を超え、整備事業者を技術面や経営面で支えるユニークな取り組みとして注目を集めている。
活動の核心は、TMP岐阜支社の技術支援グループ、伊神裕介氏と石田貴大氏が会員工場を定期的に訪問し、現場の悩みを聞きながら個別に対応する点にある。2023年に始まった「技術研鑽会」では、スキャンツールを使った故障診断や配線図の読み方、HVバッテリーの脱着方法など、実践的なテーマを設定。座学と実技を組み合わせた研修は、参加者から高い評価を得ている。2025年からは「工具安全点検」もスタートし、安全面での意識向上にも寄与している。
さらに、先進安全自動車のエーミング(センサー調整)作業に必要な特殊なターゲット類は、車種ごとに異なり、整備工場にとって大きな投資負担となっていた。TMP岐阜支社は、こうした設備を自社で多数保有し、月額500円(年額6000円)のサブスクリプションで会員に貸し出すサービスを開始。部品配送のルートを活用して必要な機器を届け、作業後に回収する仕組みを整えた。これにより、工場側は保管場所やメンテナンスの負担から解放され、自社内でエーミング作業を完結できるようになった。
会員数は発足当初の10社から、2026年7月現在で14社に増加。特筆すべきは、TMP岐阜支社と競合する地域の部品商と取引する整備工場(部品商2次店)も参加している点だ。商圏の垣根を越え、地域部品商との連携を深めることで支援の輪を広げている。「単に会員数を増やすのが目的ではない。新規入会には既存会員全社の賛成が必要で、厳格な基準を設けている。岐阜県内の整備工場、地域部品商、TMP岐阜支社の三者がWin-Winで成長し、カーオーナーを整備難民にしないインフラを作るのが使命だ」と中西支社長は語る。
実際の会員からは、効果を実感する声が相次いでいる。2025年4月に加入した株式会社松浦自動車興業の松浦宏樹代表は「短時間では入手が難しい整備情報を、TMP岐阜支社の技術支援グループがすぐに調べてくれる。現場のタイムロスが劇的に減り、若いメカニックが自分たちだけで整備を完結できるケースが増えた」と話す。また、地域部品商の紹介で加入した有限会社川瀬モータースの川瀬由美代表は「最初は他の会員と同じ支援が受けられるか不安だったが、正確なデータを提供してもらえることで現場の若手が自信を持って作業できるようになった。自発的に『次はこれを学びたい』と言い出すようになり、驚いている」と笑顔を見せる。
TMP岐阜PCは、単なる技術支援に留まらない。「からくり改善ツール・ソリューション」と名付けたプロジェクトでは、会員の増田カーサービスの要望を基に、オーダーメイドの移動型ツールスタンドを製作。使い勝手の微調整には3Dプリンターを活用し、現場の効率化を徹底的に追求した。さらに、現場改善コンサルティングや人材育成プランの提供も視野に入れている。
2026年4月から2代目の会長に就任した株式会社オートラインの佐藤敏則社長は、「この組織がより高度な技術、マネジメント、マーケティングのスキルを習得し、業界と社会貢献の一助となれば」と抱負を語る。TMP岐阜支社は2030年までに会員数40社を目標に掲げる。
高齢化や過疎化が深刻化する地方では、整備・鈑金塗装事業者の「担い手不足」と「技術変革への対応」は喫緊の課題だ。TMP岐阜PCの取り組みは、部品サプライヤーと顧客という従来の関係を超えた「共生関係」を築き、地域の自動車アフターサービスを守るモデルケースとして、全国から注目を集めている。