
フジ・メディア・ホールディングスが先ごろ発表した新グループビジョンは、ガバナンス問題による信頼失墜、広告収入の長期低迷、そして巨額赤字という三重苦を背景に打ち出された。経営再建に向けた柱として、保有する不動産を売却し、その売却益を原資にコンテンツ分野への投資を加速する方針が示された。
投資額は総額で1500億円に上り、主にIP(知的財産)の獲得や強化に充てられる。フジテレビは「甘えの元」に別れを告げると宣言したが、その裏には放送外収入を拡大し、安定的な収益基盤を築くという戦略が透けて見える。
しかし、新たな企業理念として掲げられた「楽しさ」への執着には、社内外から懐疑的な声が上がっている。80年代のバブル期に築かれた「娯楽至上主義」のDNAを引きずる姿勢が、真の改革を妨げるのではないかとの指摘だ。
実際、旧来の成功体験に依存した番組制作体制や、視聴率偏重の姿勢は依然として根強い。不動産売却というあくまで一時的な資金調達に頼る現状は、持続可能な成長戦略とは言い難いとの評価もある。
フジテレビが本当に輝きを取り戻すためには、80年代の呪縛から解き放たれ、時代に即したコンテンツ戦略とガバナンス改革を同時に進める必要がある。今回のビジョンが単なる通過点となるか、転換点となるかは、今後の実行力にかかっている。