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就職活動を始めると、多くの学生は「内定を獲得すること」を目標に掲げる。エントリーシートの書き直し、面接対策の積み重ね、企業研究への時間投下——これらは決して間違いではない。就職活動ではまず内定を得なければ、次のステージに進めないからだ。
しかし、長年学生の就職支援に携わってきた経験から言えるのは、内定獲得だけに意識が向きすぎると、本当に大切なものを見失ってしまう学生が少なくないということである。
これまで多くの学生と面談を重ねる中で感じるのは、企業研究を熱心に進める学生ほど、「企業について」は詳しく調べていても、「自分に合う理由」まで整理できていないケースが目立つことだ。
この違いは能力の差ではない。企業選びにおける「視点」の差である。企業選びで後悔しやすい学生には共通点がある。それは「企業を調べること」自体が目的化してしまっていることだ。
知名度、業界順位、初任給、福利厚生、勤務地、休日数、離職率——これらの情報は企業研究では欠かせない。しかし、比較するだけで満足してしまうと、「条件の良い会社」は見つかっても、「自分に合う会社」を見つけるのは難しくなる。
例えば、給与や知名度を重視して入社したものの、求められる働き方が自分の価値観と合わず、早期の転職を考える人もいる。逆に、当初は第一志望でなかった企業でも、「仕事の進め方が合う」「社員との距離感が心地よい」と感じ、いきいきと活躍する人もいる。この違いはどこから生まれるのか。
面談で「その会社のどこに魅力を感じたのですか」と尋ねると、多くの学生は事業内容や待遇、企業理念について詳しく説明できる。しかし「なぜ自分に合うと思ったのですか」と質問を変えると、言葉に詰まることがある。企業のことは調べていても、自分との接点まで考えられていないのだ。
企業研究とは、企業について詳しくなることではない。「この会社はどんな会社なのか」と同時に、「自分はどのような環境で力を発揮できるのか」「どのような人と働きたいのか」「どのような働き方にやりがいを感じるのか」を照らし合わせる作業である。「企業を知ること」と「自分を知ること」は常にセットでなければならない。
就職活動では「企業から選ばれる」という意識が強くなり、「企業に評価される自分」をつくることに集中しがちだ。しかし本来の企業選びは、企業が自分を評価する場であると同時に、自分自身も「この会社で働く未来」を見極める機会でもある。
だからこそ、企業研究の際には一つ質問を加えてほしい。「この会社は魅力的か」だけでなく、「私はこの会社で五年後、十年後も前向きに働いている姿を想像できるだろうか」と。この問いに向き合うことで、企業を見る視点は大きく変わる。
内定を目指して努力することは欠かせない。しかしその努力が「内定を得ること」だけで終わると、入社後に「こんなはずではなかった」という後悔につながることがある。
内定は社会人としてのスタートラインに立つための大切な通過点だ。その先の充実したキャリアまで見据えて企業を選ぶことこそ、後悔しない就職活動につながると考えている。
(「内定塾」講師 齋藤弘透)