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国鉄の分割民営化から間もなく40年。JR各社はそれぞれが競いながら、独自性を追求してきた。一方で、生産人口の減少による人手不足や安全性向上など、業界共通の課題が重くのしかかり、単独での打開は難しい。鉄道インフラを維持するため、事業者間の連携が不可欠との声が強まっている。
5月27日、インテックス大阪(大阪市住之江区)で開催された「第2回鉄道技術展・大阪2026」(主催・産経新聞社)では、「鉄道業界の課題と未来」と題した特別講演で、JR東日本代表取締役副社長・イノベーション戦略本部長の池田裕彦氏と、JR西日本理事・鉄道本部副本部長・イノベーション本部長の田淵剛氏(6月18日付でJR西日本レールテック代表取締役社長に就任予定)による技術部門のトップ対談が実現した。両氏は競争の必要性を説きながら、共通技術などで一層の連携が必要との考えで一致した。モデレーターは鉄道総合技術研究所専務理事(現理事長)の芦谷公稔氏が務めた。
芦谷氏「鉄道を取り巻く諸課題を解決するうえでどんな連携が必要かを議論していきたいと思います。最初に技術開発と課題について現状認識はどうでしょう。」
JR東・池田氏「各社それぞれが切磋琢磨をして、競い合って、新しい技術を生み出すというのは絶対必要だと思います。そのうえで各社の知見を高めて、融合し、素晴らしい商品が完成すると思っています。ウォークスルー改札もある社は顔認証を使ったり、一方はUWB(超広域帯無線通信)を利用したりするなど、目指す姿は一つでもアプローチが異なるわけです。双方のいいところを高め合って、新しい姿を生み出せるというのが必要になる。日本は人口が減ってしまうので、人海戦術では各社が破綻してしまう。日本に合った新しいやり方を作る必要があると思います。」
JR西・田淵氏「分割民営化から20年ぐらいは各社、技術力を高めるということで競争してきたと思います。基盤技術は身についてきた。この10年、コロナ禍が一番響いたのだと思いますが、限られたリソースを使いながら開発をしていくことに対しては、やはり個社では限界を感じてきています。一方で、鉄道の将来は、ほぼ同じような姿を見据えている。その点で、会社間連携というのが必要になってきたのではないかと思っています。」
芦谷氏「生産性向上に向けた連携、脱炭素への取り組み、そして自然災害の激甚化への対応、このような共通の課題に対して、開発リソースの最適化、デファクトスタンダードの早期確立、メーカーサプライチェーンの安定化で連携が必要なのだろうと思います。次の話題といたしまして、実際の連携の取り組み事例などを議題にしたいと思います。事業者の垣根を越えて情報の連携をするということで、今年度4月より、鉄道総研の方で運用開始した鉄道技術情報データベースがあります。鉄道事業者が開発し、登録した技術情報を必要とする事業者が検索をし、閲覧をし、マッチングを図るというものです。ぜひ、ご意見を伺いたいと思います。」
JR東・池田氏「各社は切磋琢磨して競争をしてきたわけで、さまざまな知見がたまり、今の安全性の高い鉄道運行が実現できている。ただ、あまりオープンにしてこなかったので、実は無駄に同じことをやっていたとか、もしこの知見があればもう一段高いレベルのことをできたと感じることはあるでしょう。JR、私鉄各社も集まったうえで、このデータベースができることによって、今までの知見がしっかり引き継がれる。これから技術進化の新しいフェーズに入っていくのではないかと期待しています。」
JR西・田淵氏「ようやくみんなで一緒にまとまれるきっかけになったと評価しています。当社でも分野ごとの技術情報データベースを構築してきましたが、これからどんどんそういう情報を集めて、次のステップに進めていきたいと思います。」
いけだ・ひろひこ 昭和41年生まれ。東大卒。平成3年4月、JR東日本入社。技術企画や輸送、投資計画などの業務に従事。運輸車両部担当部長、サービス品質改革部長を歴任し、安全・安定輸送のレベルアップやサービス向上に尽力。令和7年6月から代表取締役副社長、イノベーション戦略本部長。
たぶち・つよし 昭和46年生まれ。大阪大卒。平成7年4月、JR西日本入社。線路保守の現場経験を積んだ後、現在のイノベーション本部の前身となる技術企画部を発足。自社の技術を横断的にマネジメントする組織体制を推進する。令和5年6月から理事、鉄道本部副本部長、イノベーション本部長。