t>

「結論から言えば、非常に真っ当な判断であり、取締役会が自らの役割を果たした結果」――。日本共創プラットフォーム(JPiX)会長で日本取締役協会会長を務める冨山和彦氏は、ホンダの三部敏宏社長の続投劇をこう評価する。そのロジックとは、経営の歴史に学ぶべき重要な示唆に満ちている。
冨山氏は、21世紀初頭にソニーで大規模なリストラを断行した出井伸之氏の改革姿勢に注目する。出井氏は「選択と集中」を掲げ、収益性を優先した厳しい事業整理を進めたが、その後のソニーは長期的な成長に課題を残した。冨山氏はこの事例を、単なるコスト削減の危険性を示す教訓として挙げる。
「出井氏の改革は、当時としては合理的な『引き算』だった。しかし、ホンダが今必要としているのは、将来の成長に向けた投資を積極的に行う『足し算の経営』だ」。冨山氏はこう指摘し、三部社長には出井氏の失敗から学び、短期的な効率性だけでなく、新事業や技術への投資を重視すべきだと訴える。
具体的には、電動化や自動運転といった分野での積極投資が重要だ。冨山氏は「ホンダには優れた技術力がある。それを生かすには、既存の事業構造を守るだけでなく、新しい領域にリソースを振り向ける果敢な決断が必要」と強調する。三部社長の続投は、その安定したリーダーシップを評価した結果だという。
冨山氏は最後に、「取締役会が社長の続投を決めたのは、経営の継続性を重視した正しい判断。だが、その先にあるのは、過去の成功体験に縛られず、未来への投資を恐れずに行う『足し算の経営』への転換だ」と総括する。ホンダが新たな成長軌道に乗るかどうかは、三部社長の手腕にかかっていると冨山氏は結んだ。