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政府が「AI基本計画」(2025年)で掲げた「反転攻勢」の旗印は、2026年7月の改訂版でより具体性を帯びてきた。データ、基盤モデル、アプリケーションを包括する「AIエコシステム」の国内構築を目指し、特にフィジカルAIと領域特化型AIを軸とする「AX(AIトランスフォーメーション)」を勝ち筋に位置づけたのだ。この追い風を受けて、国内のIT大手やスタートアップは競うように国産AIの開発・商用化を進めている。そんな中、NTT、ソフトバンク、Sakana AIといった一見異なる分野の企業に、ある共通点があることが浮かび上がってきた。それは、米NVIDIA社の製品群とオープンソースモデルを積極的に活用しているという点だ。
NVIDIAといえば「AI向け半導体メーカー」のイメージが強いが、実際にはAI開発に必要なインフラやソフトウェアを一貫して提供するプラットフォーマーである。専用のAIファクトリー「NVIDIA AI Factory」や運用・活用を統合した「NVIDIA AI Enterprise」といったソリューションを展開している。今回、国内各社が活用したのは、オープンモデルやデータセット、ライブラリをパッケージ化した「NVIDIA Nemotron」(ネモトロン)だ。この技術セットにより、AIモデルの開発やカスタマイズを大幅に効率化できるという。
具体的な事例を見てみよう。ソフトバンク傘下のSB Intuitionsは、日本語大規模言語モデル「Sarashina」シリーズの学習にNVIDIA Nemotronを採用。特に事後学習用ライブラリ「NVIDIA NeMo RL」と大規模モデル高速学習ライブラリ「Megatron-LM」を中心に活用した。さらにソフトバンクは、SarashinaとNemotronを組み合わせ、通信ネットワークの自律運用を目指す業界特化型基盤モデル「Large Telecom Model(LTM)」を開発している。
NTTデータは、日本の人口統計や文化的背景を反映したデータセット「NVIDIA Nemotron-Personas-Japan」を用いて、自社の大規模言語モデル「tsuzumi 2」の学習データを拡張。これにより質問応答の精度向上を実現した。また、マルチエージェントシステムの効率的な開発・運用を可能にする「NVIDIA Agent Toolkit」の採用も進めており、拡張性の高いシステム展開を検討している。
2023年創業のユニコーン企業Sakana AIは、ビッグテックが巨大モデルを競う中で、小さなモデルを組み合わせる独自戦略を取る。同社の「Sakana Fugu」はタスクごとに複数のAIモデルを動的に切り替えるマルチエージェントシステムであり、ここにNVIDIA Nemotronを統合することで、最適なモデル選択が可能になったという。一方、東京科学大学は日本語処理に特化したオープン基盤モデル「Swallow」シリーズの事前・事後学習にNemotronのデータセットを活用。経済産業省の支援事業「GENIAC」に採択されたスタートアップStockmarkは、NVIDIAのオープンモデル「NVIDIA Nemotron 3 Nano Omni」をベースに、日本語ビジネス文書の読解・構造化に特化した視覚言語モデル「Stockmark-Nemotron-3-Nano-Omni-JapanDocReader」を開発した。
NVIDIAのジェンスン・フアンCEOは、各国が自国のAIインフラを所有・管理する必要性を強調した上で、「オープンモデルを活用すればAIの検証や改善、導入が容易になる」と説明する。日本企業との連携については、「NVIDIAは日本のAIリーダーたちと共に、新たな発見を加速させ、国家の能力を強化し、あらゆる社会がAI革新に参加し恩恵を享受できるオープンなAIエコシステムの構築を推進する」とコメントしている。国内各社の取り組みは、オープンモデルや技術セットの活用が開発の高速化、コスト抑制、運用効率化に直結する好例と言えるだろう。