
夫の死を経て新たな人生を歩む漫画家・くらたまが、友人に誘われて参加した広島・生口島の「ジビエツアー」。元会社員の女性猟師が案内する山で出会った、50代で初めて経験する味とは――。
ツアー当日、くらたまは緊張しながらも期待に胸を膨らませていた。夫を亡くしてから閉じこもりがちだった彼女を、友人が無理やり連れ出したのだ。生口島の豊かな自然の中で、何か新しい発見があるかもしれないと彼女は語る。
案内役の女性猟師は、もとは都内の大手企業で働く会社員だった。地元の猟師と出会い、狩猟の世界に魅了されて島に移住。現在は年間数十頭のイノシシやシカを捕獲し、ジビエ料理の普及にも力を入れている。彼女は「山の恵みを無駄にしたくない」と話す。
山道を歩きながら、女性猟師は次々に食べられる野草やキノコを見つける。中でもくらたまの目を引いたのは、岩場に生えた巨大なしいたけだった。その場で焼いて食べると、口の中に広がる濃厚なうま味と、まるでアワビのようなコリコリした食感にくらたまは絶句した。「アワビみたいなしいたけ」と彼女は叫んだ。
くらたまは「50年近く生きてきたけど、こんな味は初めて。食材本来の力を感じた」と振り返る。女性猟師は「自然の恵みをそのままいただくのが、食の原点」と語る。都会の喧騒を離れ、獲れたての恵みに触れる体験は、くらたまに新たな人生の一歩を踏み出す勇気を与えた。