
日本政府がフィリピンのマルコス大統領を国賓待遇で招待する決定には、単なる外交儀礼を超えた戦略的思惑が隠されている。経済・政局不安に揺れるフィリピンをなぜ今、最高の厚遇で迎えるのか。その背景には、日本の安全保障上の懸念と、成長市場としてのフィリピンの重要性が大きく関わっている。
マルコス大統領は2022年に就任し、任期は2028年までだが、国内ではインフレや経済成長の鈍化、麻薬撲滅作戦を巡る人権問題などで支持率に陰りが見える。議会での与党勢力は依然強いものの、副大統領との路線対立や前政権の遺産を巡る混乱もあり、いわゆる「レームダック」とまでは言えないが、先行きは不透明だ。
日本にとってフィリピンは、南シナ海問題で中国と対峙する重要なパートナーである。今年3月には日米比首脳会談が開かれ、安全保障協力が加速。日本政府はフィリピンの経済発展を通じて地域の安定を図りたい考えだ。国賓招待は、そうした絆を象徴する場として活用される。
経済面では、日本企業のフィリピン進出が加速している。自動車、半導体、インフラ投資は拡大傾向にあり、マルコス政権が推進する「Build Better More」インフラ計画にも日本企業の参画が期待されている。レームダック化が進む前の政権に、大型契約を結んでおく狙いもあると専門家は指摘する。
日本政府は今回の国賓招待を機に、防衛装備品の移転や政府開発援助の新規案件を打ち出す見通しだ。マルコス大統領にとっては国内の求心力維持、日本にとっては東南アジアでのプレゼンス強化と、互いにメリットがある。だが、フィリピンの政治リスクをどう見極めるかが、今後の日比関係の鍵を握る。