
戦時下のウクライナにおいても、最近は日本の農産品が人気を集めている。特に日本茶が注目され、スイーツ材料としての抹茶に加え、茶葉から淹れるお茶の需要も拡大している。日本貿易振興機構(ジェトロ)によると、「産地や茶葉を指定してくる現地バイヤーもいる」といい、その人気は本物だ。
欧州全体で日本の「食」への関心が高まっており、西欧だけでなく東欧でもその傾向が顕著だ。ウクライナでは日本茶のほか、お菓子や海苔などの日本食材も流通している。隣国ポーランド経由で流入するケースが多いという。
同じような潮流が世界中で進み、日本の農産品の中でも緑茶輸出の伸びが際立つ。昨年の輸出額は前年の約2倍となる721億円に達し、事業者からは「輸出に回せる茶が足りない」との声も上がっている。
気になるのは輸出競合国の存在だ。2023年の緑茶輸出国ランキング1位は中国で、特に抹茶の大規模な輸出産地が目を引く。貴州省銅仁市は「中国抹茶の都」として量産体制を整備していると報じられ、日本茶を代替する傾向が強まれば輸出機会を失う恐れがある。
中国産茶を巡っては、かつて無断で「京都宇治」を商標登録した騒動など、日本茶人気に乗じた動きが問題視されてきた。日本茶業中央会は昨年10月に「日本茶」の地理的表示(GI)登録を農林水産省に申請。ブランド保護と差別化に向けた重要な布石と期待される。
供給力の維持・拡大も欠かせない。茶生産は担い手の高齢化などの構造問題を抱え、栽培面積や生産量は減少傾向にある。農水省は茶園の若返りや有機栽培を支援しており、「絶対的に生産量を増やさなければならない」(同省)との認識のもと、輸出産地の形成など対策を推進すべきだ。
日本茶の品質の高さは誰もが認めるところだ。その優位性を守れるかが問われている。農業以外でも日本の工業製品が中国や韓国に質・量で追い抜かれた例は少なくない。そうした轍を踏まぬよう、腰を据えた輸出戦略が求められる。