
猛暑に見舞われたこの夏、一通のLINEメッセージが届いた。送り主は池田知加恵さん(90)。1985年の日航機墜落事故で夫を失った遺族だ。15年前に取材で知り合い、その後も連絡を取り合ってきた。
「祖父が残した古いアルバムが自宅に残っているんです。いまでは表に出せないようなむごい写真もあって、どうしたものか……」と知加恵さんは言う。100年前に東京を火の海に包んだ関東大震災の被災状況をまとめたアルバムで、45枚の写真には崩れ落ちたビルや橋、吉原で犠牲になった女性たちの遺体も写っている。
知加恵さんの父は終戦を決めた「御前会議」にも列席した元陸軍中将池田純久さん(1894~1968)だ。祖父の純孝さん(1864~1929)も軍人で、日露戦争時に乃木希典に仕えた。部隊の食糧管理を担当した人物が軍のロジスティクス経験を生かし、手作りの被災アルバムをまとめた。
「ほかにも、我が家には祖父や父が残したいろんなものがあるんです」と知加恵さんは言う。池田家に眠る「遺品の謎」。かつて現場を歩き回った社会部記者だった私は、50歳を過ぎて管理職となり現場取材から遠ざかっていた。しかし、自ら解き明かしたいと思い、ノートとペンをカバンに詰め込んだ。
アルバムは知加恵さんが暮らす東京都内のマンションに保管されている。遺品は持ち主の生きた証であるだけでなく、歴史を後世に残す資料の役割も果たす。背景にあるストーリーを浮き彫りにすることで、「自分が、自分の大切な人が同じ目に遭ったら……」という想像を生む力を持つ。
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