
山岳遭難や獣害対策など、これまで通信が届かない「圏外」だった場所での活用が期待される衛星スマホ通信。KDDI、ドコモ、ソフトバンクの大手3社が同じ技術基盤を用いてサービスを開始し、一見すると横並びの競争状態にある。しかし、真の差別化はつながった後の使い勝手にあると業界関係者は見る。
3社はいずれも米AST SpaceMobileの衛星ネットワークを利用しており、通信方式やカバレッジはほぼ同じだ。そのため、料金プランや対応端末の違い以外にユーザーが感じる差異は少ない。だが、各社は単なる通話・テキスト通信から一歩進めた機能を模索している。
KDDIは自社の衛星通信サービス「auスマートパス」と連携し、位置情報通知や緊急通報機能を強化。ドコモはドローンや遠隔監視システムとの接続を視野に入れ、法人向けソリューションを拡充する。ソフトバンクは災害時の自治体連携を前面に打ち出し、防災分野での実績作りを急ぐ。
「つながらない」から「つながる」への移行期を経て、次の競争軸は通信後のデータ活用と既存サービスとの融合に移る。例えば、山岳遭難時には自動で救助隊に位置情報が送られる仕組みや、獣害対策用センサーが衛星経由で異常を通知するシステムなど、付加価値が勝負を分ける。
現在は同じ出発点に立つ3社だが、パートナー企業との協業や独自アプリ開発の速度によって、数年後には明暗が分かれる可能性が高い。圏外環境を新しい市場に変えるこの分野で、どの事業者が最も実用的なエコシステムを構築できるかが問われている。