
2025年5月、海上自衛隊の護衛艦「いずも」が訓練中にドローンによる不正撮影を受けた事件は、日本の防衛体制に深刻な空白があることを露呈した。艦のレーダーや光学センサーは小型無人機を捉えきれず、異変に気づいたのは数時間後の映像流出だった。この一件は、ドローン戦術が急速に進化する現代戦において、日本が「検知」と「対処」の両面で後れを取っている現実を浮き彫りにした。
事件から2年が経過した今も、防衛省は小型ドローンへの恒常的な対抗手段を確立できていない。専門家は、防衛予算の配分が従来型兵器に偏り、廉価で調達可能なドローン対策への投資が後回しにされていると指摘する。2023年度補正予算で計上された対ドローン装備の多くは試験段階にとどまり、実戦配備には至っていない。
ドローン対策を妨げる最大の壁は、組織の縦割りと法制の未整備だ。自衛隊内では陸・海・空の統合運用が進まず、市街地などでの使用が想定される対ドローンシステムは、警察や海上保安庁との役割分担でも混乱が生じている。また、電波法や航空法が小型ドローンの妨害装置を事実上禁止しており、平時の運用はほとんど不可能に近い。
一方、ウクライナでは市販のFPVドローンが戦車や物資集積所を次々と破壊し、ロシアも大規模なドローン・スウォーム攻撃を実戦投入している。覇権国家は既にAI自律型ドローンの開発競争を加速しており、日本が対処法なしに「ドローン音痴」のままでいる余裕はない。国際的な脅威認識との落差は著しい。
実装を阻む本質は、技術面ではなく制度と意識にある。軍事専門家は「空撮事件は警鐘だったが、2年経っても抜本的な改革は進んでいない」と語る。ドローン戦闘の常識が変わる中、日本が取るべきは、規制緩和と省庁連携の即時実行だ。沈静化した危機感を再び呼び覚まし、行動に移せるかどうかが問われている。