
東京から電車で約2時間、長野県佐久市臼田地区に位置する「ホシノマチ団地」は、かつて入居希望者が5年以上ゼロという深刻な空室問題を抱えていた。築30年を超えたこの団地は、周辺の過疎化と老朽化が理由で、不動産市場ではほぼ価値がないと見なされていた。
しかし、近年この団地に転機が訪れた。地域の豊かな自然環境と、佐久市が持つ医療・教育インフラの充実が、子育て世代やテレワークを希望する都市部の移住者から注目を集めたのである。「教育移住」という言葉が広がる中、この団地は新たなライフスタイルを求める人々の受け皿として生まれ変わっていった。
入居希望者が急増した背景には、地域ぐるみのユニークな取り組みがある。団地の管理組合は、共用スペースをコワーキングスペースや子ども向けの学習塾に改装し、住民同士の交流イベントを定期的に開催。こうした工夫が、単なる住まい以上のコミュニティ価値を生み出している。
実際に移住した家族の声からは、「自然の中で子どもたちが伸び伸び育つ」「東京よりも医療施設が身近で安心」といった評価が聞かれる。自治体も移住支援制度を拡充し、特に教育環境の整備に力を入れたことで、子育て世帯の流入が加速している。
今後、ホシノマチ団地のように、地方の空き団地が「移住者の聖地」として再生する事例はさらに増えるとみられる。都市と地方の格差が叫ばれる中、この地域の成功は、自然資源と行政の連携が生み出す新しい暮らしの可能性を示している。