
健康志向の高まりを背景に、黒酢が注目を集めている。鹿児島県霧島市の福山町では、江戸時代から伝わる壺造りの製法が今日まで大切に受け継がれてきた。
この製法で作られた酢に「黒酢」という名称を付けたのは、坂元醸造の5代目社長・坂元昭夫氏である。1975年の命名から50年が経過し、現在も市街地にある「壺畑」にて醸造が続けられている。
福山町は三方を姶良カルデラ壁に囲まれ、錦江湾に面する温暖な気候に恵まれている。この環境は、黒酢造りに欠かせない微生物の活動を活発に保つ。
近くの福山港は薩摩藩時代の交通の要衝であり、原料となる米が港を通じて運び込まれた。また、カルデラ壁から湧き出る良質な地下水や、微生物が定着しやすい薩摩焼の壺など、醸造に理想的な条件が幾重にも重なっている。
自然の恵みと先人の知恵が融合した「壺畑」では、琥珀色に輝く黒酢が静かに熟成され、甘酸っぱい香りが辺りに漂う。この伝統の味は、地域の誇りとしてこれからも守り続けられる。