t>

即金日払いを選ぶ人々は、なぜこの道を歩むのか。49歳、正社員経験ゼロの戸田正和さんは、波乱万丈な職歴や生活保護、わずか209円の残高と向き合いながらも、自分なりの誇りを持ち続けています。彼の口座残高は、ある日突然「209円ですよ。見ますか?」と銀行員に言われるまで気づかなかったそうです。
戸田さんは就職氷河期世代のまっただ中に社会に出ました。バブル崩壊後の就職難が続く中、正社員として採用されることはなく、派遣社員やアルバイトで生計を立ててきました。「正社員の道が閉ざされると、そこから抜け出せないまま年を重ねた」と彼は振り返ります。職歴は断続的で、貯金はほとんどありません。
現在の月収は約11万円。生活保護の基準額を下回りますが、戸田さんは申請していません。「生活保護は最後のセーフティネットだが、一度頼ると戻れなくなる気がする。まだ自分の力でやれるうちは受け取りたくない」と語ります。この自立へのこだわりが彼を日払いの仕事へと向かわせています。
日々の収入は即金日払いの単発労働でまかないます。倉庫作業やイベント警備など、その日限りの仕事を渡り歩く生活です。「月収11万円でも、家賃と食費を払えばほとんど残らない。でも、自由な時間がある今の暮らしに満足している部分もある」と戸田さんは苦笑します。口座残高209円の日々が続いています。
就職氷河期世代が抱える構造的な就業困難に対して、戸田さんは「社会のせいにしても始まらない」と冷静です。むしろ、限られた資源の中で自分のルールで生きることに誇りを感じているといいます。彼のような「見えない貧困」を抱える人々は少なくありません。「口座残高は209円ですよ」という銀行員の言葉は、彼の現状を象徴するエピソードとして、忘れられない記憶となっています。