
JR北海道は、利用者が極めて少ない「黄色線区」と呼ばれる8区間の維持に向け、沿線自治体に路盤などのインフラ所有を求める「上下分離方式」を軸とした改善案を提示した。対象となるのは石北線など計925.7キロに及び、これは同社の在来線の約半分を占める膨大な規模となっている。2024年度の営業赤字は約148億円に上る見通しで、抜本的な対策が急務となっている。政府は今年度末までに具体的な改善策をまとめるよう求めており、議論は正念場を迎えている。
JR北は「単独では維持困難」として、維持管理費を減らすことで運行を継続したい考えだが、受け入れる自治体側の反発は強い。人口減少と過疎化に直面する自治体にとって、多額の維持費を新たに背負うことは財政上の大きなリスクを伴うからだ。一部からは政府による追加支援を求める声も上がっており、単なる赤字の付け替えでは問題の根本解決にはならない。農産物を運ぶ貨物列車のルートも含まれるため、この問題は北海道内だけでなく全国的な物流網にも影響を及ぼす。
1987年の国鉄分割民営化から30年以上が経過したが、JR北海道や四国などは自立のめどが立たず、公的支援に頼る状況が続いている。近年では本州の各社も、上越線や内房線、山陰線といった幹線の一部を含め、赤字路線の経営状況を公表し始めた。災害による長期不通や設備の老朽化も重なり、地方路線の維持は全国的な課題となっている。かつて描かれた民営化の青写真が、現在の急激な人口減少社会と乖離している事実は否めない。
2023年には鉄道会社と自治体が話し合う「再構築協議会」の制度が新設されたが、議論は難航が予想される。通院や通学で鉄道を必要とする高齢者や学生にとって、存廃議論は生活に直結する切実な問題である。現場の首長たちからは「公共とは何なのか」という根源的な問いが発せられている。地方鉄道の維持は、橋や水道といった生活インフラをどう守るかという、国家の根幹に関わる議論そのものであると言える。
政府は特定の赤字路線への対応を現場に委ねるだけでなく、日本全体の運輸政策における鉄道の立ち位置を明確に示すべきだ。慢性的な赤字体質から脱却するための経営基盤の強化策も、より踏み込んで検討する必要がある。旧国鉄から引き継いだ広大な鉄道網を将来にどう繋ぐのか、政府のより積極的な関与と責任ある姿勢が不可欠だ。人々の暮らしを守るための「鉄道以外の検討必要」という現実的な選択肢を含め、国民的な合意形成が求められている。
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