t>

米国とイランの交戦が長引き、ホルムズ海峡の封鎖によってナフサの供給不安が続く中、脱プラスチックが加速し、石油系素材に代わって竹が注目されている。木よりも成長が速く安定供給できるサステナブル素材であり、日本人には古来よりなじみ深い。箸から住宅まで幅広い竹製品を扱うアステップ(千葉県船橋市)では現在、竹の使い捨て食器の引き合いが殺到。歯ブラシやくしなどのホテルアメニティーをプラから竹に切り替える動きもある。消費拡大は、旺盛な繁殖力ゆえに公害化する放置竹林問題の解決策としても期待だ。
竹をプレス成型したスプーン&フォークは水管の縦じまに趣があり、使い捨てがもったいないほど。ネット通販のアマゾンでは個包装1本5円台(100本単位から)で販売されている。「大量発注で価格は下げられる。全国展開のスーパーや外食なら3円台で提供し、脱プラの節目にしたい。年内に5億本納入を見込んで生産ラインを懸命に整えている」とアステップの西内毅社長(60)。
2月末からのイランへの攻撃開始以降、持ち帰り用食器をプラから竹に切り替えたいと大手企業を中心に引き合いが相次ぎ、現在約15社と商談を進めている。
取材は七夕の7月7日。3月に竣工し「日本初の竹造3階建て住宅」と銘打つ、本社兼ショールーム「TAKE TORI HOUSE」を訪れた。竹を組んだ網代の壁、ヘリンボーン柄の床、建具、家具、小物…あらゆるものが竹製だ。「自社のプロダクトを全て展示。竹の集成材研究から住宅建材の開発に発展した。強度があり高級木材よりも手ごろ。竹炭の調湿効果など、自分で暮らしながら機能を検証しています」という自慢の家だ。
原寸大のサッカーボールを転がすと一瞬でバラバラに…。知育玩具パズルだ。24日からクラウドファンディングMakuakeで3万9800円で発売する。
「100以上商品開発してきたが、世に出ていないものはその3倍。竹は加工技術により多用途に使え、アイデアが次々と湧いてきます」。削りかすを培養して紙や炭に、間伐材で食用メンマを生産。無駄を出さない生産方法も特徴だ。
昭和38年に両親が東京都港区で創業したおしぼりメーカーで、西内社長が5歳のときに船橋市に移転した。昭和までは周囲に竹林が多く管理も自然に学んだ。素材としての探求心は、すし職人の叔父からプロ仕様の竹箸をもらったことがきっかけになり、平成14年発売の箸「竹一番」が竹製品第1号となった。平成25年には、化学薬品を使わない防カビ竹箸の開発で特許も取得している。
中国の福建省と湖南省産の4年目の竹を1日1300本ペースで加工している。日本の放置竹林を使うことはできないのか?
「国内は竹林規模が小さく事業化しにくいが、われわれの利活用実績を生かしてほしいと考えている。まずは伐採して整地すること。翌春にはタケノコが食べられる。さらに3年の管理を経て加工品にしてゆく。昔は普通にやっていたことです。非営利のイベントではなくビジネス展開できれば、成長力旺盛な竹は持続可能な資源になる」
東京都港区の芝パークホテルは令和2年から導入。系列のパークホテル東京と合わせて計466室で、歯ブラシ、くし、かみそりなどのほかゴミ箱やハンガーなども竹製に切り替えた。プラ製よりもコストが1.5~2倍になる中での決断だった。「2015年の国連のSDGs採択以降、欧州の旅行代理店から環境問題へのアクションを問われる機会が増えた。宿泊客の環境意識の高まりにも応えたい」と担当マネジャー。カードキーも竹の板にチップが埋め込まれたものだ。
竹はホテルが取り組む環境保護活動の象徴のひとつ。環境省が進める、食べ残しの自己責任による持ち帰り「mottECO(モッテコ)」にも参加しており、27日に都内で開かれる食品ロス削減イベントにも出展する。
「竹害」と呼ばれる放置竹林だが、人の行動で害は益に変わる。問われるのは地球にやさしい判断だ。(重松明子)