t>

「揚げたて」のおいしさを自宅で――。湖池屋の「揚げたて直送便」は、ポテトチップスを製造から3日以内に直送する同社渾身の完全受注生産品だ。累計970万袋を超える大ヒット商品となっているが、その背景を取材すると、一時は連続赤字に陥った同社のブランド再生劇が見えてくる。
通常のポテトチップスは、スーパーやコンビニの店頭に並ぶまでに時間がかかり、揚げたての香ばしさが失われやすい。この商品は注文を受けてから工場で揚げ、袋詰めしたものを製造から3日以内に消費者へ直送する。時間との勝負を徹底することで、一般流通品では味わえない食感と風味を実現し、「揚げたて」の価値をそのまま届けている。
人気拡大の背景には、同社が経験した苦境がある。湖池屋はポテトチップスの先駆者として長く愛されてきたが、他社との価格競争やコンビニエンスストア向け商品の台頭などで販売が低迷。それまでの大量生産・大量販売モデルが通用しなくなり、一時は連続赤字に陥った。この危機が、あらためて自社の強みを見つめ直す契機となった。
再生戦略の柱となったのが、大量流通と一線を画す「完全受注生産」という逆転の発想だ。店頭で賞味期限内に売り切る従来型のビジネスではなく、揚げたてを届けること自体を商品価値に変えた。高価格帯でありながら、味や体験を重視する消費者の支持を集め、リピーターを増やしている。同社にとっては、ファンと直接つながる新たなビジネスモデルでもある。
「揚げたて直送便」のヒットは、湖池屋のブランドイメージを大きく塗り替えた。連続赤字からの回復をけん引する看板商品となっただけでなく、商品開発の原点である「おいしさ」へのこだわりを再認識させた形だ。同社は今後もこの成功で得た知見を生かし、揚げたてならではの価値を軸にした商品やサービスを展開していくとみられる。