
核不拡散条約(NPT)の履行状況や目標を確認する再検討会議が、米ニューヨークの国連本部で27日に始まった。4週間の会期中、国際社会が核軍縮に向けた具体的な進展を示せるかが焦点となっている。この歴史的転換点における注目点について、国際NGO「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN)の国際運営委員などを務める川崎哲(あきら)さんに話を聞いた。
川崎氏は現在の国際情勢を、条約の根幹を揺るがす深刻な事態であると分析している。同氏は「核軍縮のみならず、国際法に基づく秩序自体が危機に瀕(ひん)しています。NPTが信頼に足る国際条約として今後も継続できるのかが試される、きわめて重要な会議になるでしょう」と警鐘を鳴らした。核兵器を巡る議論は、今や単なる軍縮の枠を超え、法の支配そのものの是非を問う段階に達している。
過去数十年の課題と現在の危機を比較すると、問題の所在が大きく変化していることが分かる。川崎氏は「1990~2000年代は北朝鮮やイラン、イラクといった国々による核兵器開発の疑惑への対処が国際社会の中心的な課題でした」と振り返る。しかし近年では、ロシアや米国といった核保有大国自身が国際法を無視した武力行使を繰り返しており、秩序を乱す主体が変容しているのが実情だ。
NPTは、米露仏英中の5カ国にのみ保有を認め、他国には禁じるという本質的な不平等さを抱えている。この体制が維持されてきたのは、保有国が責任ある行動をとり、最終的な核廃絶を約束するという信頼に基づいていたからに他ならない。ところが現在は非保有国の間で、「核保有国こそNPTを守っていないじゃないか」「NPTなんて意味がないじゃないか」という不信感が急速に広がっていると川崎氏は指摘する。
ウクライナ戦争の長期化は、各国の安全保障観にも深刻な影響を及ぼしている。ロシアが核による威嚇を繰り返す中で、欧州の一部では自国の防衛のために核保有を求める機運さえ高まりつつある。核軍縮への逆風が強まる中、条約が名実ともに「空洞化」することを防げるのか。唯一の戦争被爆国である日本には、保有国と非保有国の対立を解きほぐすための粘り強い外交努力が求められている。
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