t>

先代の試乗から5年の歳月が流れたが、トヨタ『RAV4』は依然として世界でもっとも販売台数の多いクルマである。新型に乗ると、その人気の理由が改めて納得できる。
新しいRAV4の大きな進化点は、内外装の一新よりも運転支援体制の充実にあると感じた。周囲の状況を音声で教えてくれる機能や、前車発進を知らせる案内が、「前の車両を確認してください」といったソフトな文言で提供される。
さらに「まもなく信号が変わります」と、赤から青へのタイミングまで知らせてくれる。この音声案内は、スマホをチェックするうえで極めて有益で、いずれは当たり前のシステムになるだろう。
新型に乗ると、そうした進化が凄まじい勢いでコモディティー化している現実を知る。例えば前車が速度を落とした時や、高速でコーナーに侵入した時は、やんわりとブレーキをかけてくれる。
これはBEVの『bZ4X』で初めて味わった機能だが、クルマが人間に代わって最低限の運転を支援する仕組みがすでに出来上がっていることを感じる。とはいえ、多くのエンドユーザーは自動運転という言葉をはき違えている。
クルマがなんでもすべてやってくれると勘違いしているが、レベル4やレベル5ならともかく、それ以下の段階では自動運転という言葉を使わない方が良いと思う。新型RAV4の運転支援は、新たなソフトウェアプラットフォーム「Arene(アリーン)」の初採用によって大きく進化した。
高速を使う時間がなかったため広範な支援を体験できなかったが、今考えられるありとあらゆるサポート機能をこのクルマは有している。デザインは最新のトヨタトレンドを反映し、フロントマスクはハンマーヘッドデザインと呼ばれる。
シュモクザメにヒントを得たスタイルで、明確なグリルという概念を持たないボコボコと穴をあけたようなフロントエンドは、レクサスを含む近年のトヨタデザインの特徴だ。先代はストロングフェイスを持ったデザインで、アメリカなどで主流だったが、個人的にはハンマーヘッド系に移行する気がしてならない。
試乗したのはハイブリッドのZグレードで、現行モデルからガソリン仕様は姿を消し、ハイブリッドもしくはPHEVに絞られた。価格は上昇し、試乗車の車両本体価格は490万円、オプションを含め514万3100円と結構なお値段だ。
エンジンは旧型からのキャリーオーバーで2.5リットル4気筒だが、フロントモーターがパワフルになり、エンジンパワーも若干引き上げられた。走りに顕著な変化は感じないが、エンジンとモーターのやり取りが非常にスムーズで、違和感を全く感じさせない。
直前まで他ブランドのPHEVに乗っていたが、そのクルマはガソリンエンジンからモーター走行への変換が上手くできず、ぎくしゃく感があった。RAV4はそれが全くスムーズに行われ、あらゆる速度域で走りのスムーズさが顕著だ。乗り心地も非常に優れている。
インパネはメータークラスターを含めすべてデジタルディスプレイ化され、シフトレバーはエレクトロシフトマチックを採用。従来はニュートラルを起点にBシフトとD/Rが左右に分かれていたが、今回はDに入れてさらに下に動かすとBに入る仕組みに変わった。
Bをバックと勘違いするユーザーがいるため、この方が誤操作しにくいと思う。あらゆる面で至れり尽くせりだが、透過音が大きな点は不満だ。エンジン音が回転を上げると明確に室内に侵入し、静粛性では先代に劣る。
我が家の旧型RAV4と乗り比べて感じた点だ。■5つ星評価:パッケージング:★★★★★、インテリア/居住性:★★★★★、パワーソース:★★★★、フットワーク:★★★★★、おすすめ度:★★★★★。
中村孝仁(なかむらたかひと)はAJAJ会員・自動車技術会会員・東京都医師会「高齢社会における運転技能および運転環境検討委員会」委員。1952年生まれ、4歳でモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。1977年にジャーナリズム業界に入り、48年間フリージャーナリストとして活動。現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。テレビ東京「開運なんでも鑑定団」で自動車関係出品の鑑定士としても活躍中。