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夏休みになると、私は九州の祖父の家へ遊びに行った。窓の外では庭いっぱいにセミが鳴き、台所のテーブルには書きかけの絵日記と東京から持ってきた12色の色鉛筆を並べたが、鉛筆削りを持ってくるのを忘れていた。
丸くなったり芯が折れたりした鉛筆を見た祖父は、何も言わずに小さなナイフを持ってきた。
祖父は新聞広告を広げ、その上で鉛筆の木軸へ刃を当てた。サク、サク、と乾いた音が部屋に響き、くるりと巻いた木の削り華が落ちていく。中から現れた芯はさらに研がれて、芯の粉が積もるころには、色鉛筆は見違えるほど美しい姿になっていた。
鉛筆削りで削ったものとはまるで違う。木肌には刃の跡が残り、小さな山並みのような起伏がある。その一本には、祖父が生きてきた時間や人柄までもが刻まれているように思えた。
グラスの氷がカランと鳴る。外側には水滴が伝っている。私はジュースを飲むことを忘れ、祖父の手で、一本、また一本と生まれ変わっていく色鉛筆を見つめていた。